【漫画】怪力少女と機械の体を持つ男が旅へーーフランス発の日本コミック、武田登竜門『DOGA』が面白い

「旅」とは「人生」のメタファーである

武田登竜門『DOGA(2)』(双葉社)

 さて、最後に、「期限つきの旅」という本作のテーマの1つに話を戻すが、あらためていうまでもなく、物語における「旅」とは、「人生」のメタファーである。

 映画には「ロードムービー」と呼ばれるジャンルがあり、観る者はスクリーンを通して主人公と同じ「旅」――すなわち「人生」を体験することで、ともに成長していくことになる。だから旅の物語は面白い。

 『DOGA』の主人公ふたりは、「富める者」と「貧しき者」、「機械の体」と「健康的な肉体」、「内気な性格」と「物怖じしない性格」、そして、「男」と「女」というように、あらゆる点で対照的なコンビだが、心の底から「自由」を求めているという点では似た者同士だ。さらにいえば、すぐにでも起こりうる“死”に抗い、“いま”という瞬間を懸命に生き、絶えず「選択」と「行動」によって「自分」を作り上げているある種の実存主義者たちだ。

 果たしてヨーテがいうように、「海」に辿り着けば、本当に「生き返る」ことができるのか。それはまだ誰にもわからないし、そもそもそんな保証はハナからどこにもない。

 しかし、そこにいたるまでの「旅」の経験は、どんな結末が待っていたとしても、ふたりにとって決して無駄なものにはならないだろう。なぜなら、「人生」という名の「旅」もまた、“どう終えたか”ではなく、“どう生きたか”が問われるものだからだ。

 なお、先ほど私は、本作の主人公ふたりのうち、ドガのキャラクターに注目すべきだと書いたが、実質的な主人公をひとりだけ選ぶなら、それは当然ヨーテということになる。だが、タイトルはあくまでも『DOGA』だ。その意味をあらためて考えてみるといいかもしれない。

■作品情報
『DOGA(1)』
著者:武田登竜門
価格:792円
発売日:2024年3月21日
出版社:双葉社

『DOGA(2)』
著者:武田登竜門
価格:792円
発売日:2024年5月16日
出版社:双葉社

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