『ゴジラ-1.0』山﨑貴監督は「模型の国の住人」だった 改めて注目したい“模型の映画”への憧憬と余波
そんな「模型の国の住人」である山﨑監督の作品に対して、模型業界側からもたびたびアプローチが行なわれてきた。『永遠の0』公開時には模型メーカーのハセガワが映画のキービジュアルを使った限定パッケージの零戦のキットを発売。また厳密にはプラモデルではないが、フィギュアメーカーの海洋堂からは『海賊と呼ばれた男』に登場する日章丸の1/700ディスプレイモデルが発売されたこともあった。
『ゴジラ-1.0』でもそんな模型側からのアプローチは健在。前述のハセガワは「劇中登場仕様」として1/48スケールの震電を描き下ろしの特別パッケージと限定版のデカール付きで発売。震電に関しては大日本絵画から『日本海軍局地戦闘機 震電 モデリングファイル』と題した書籍が発売されており、各社の震電のキットを美しい作例の姿で見ることができる。また、『ゴジラ-1.0』の公開時には映画館で登場兵器のプラモデルが販売されている光景も目にした。すでにキット化されている軍艦や戦闘機が活躍する『ゴジラ-1.0』は、関連商品を新たに作り起こさなくてもいいという点で、模型メーカーにとってもありがたい存在だったはずである。そんな「模型の国の住人」であり、そして模型業界にもたびたびビジネスチャンスを生み出してきた山﨑監督が『ゴジラ-1.0』でアカデミー賞をとったことは、一人のプラモデル好きとして素直に嬉しい。模型にインスピレーションを受けつつ立体と平面を行き来しながら映画を作ってきた山﨑監督の受賞は、日本模型業界の勝利……とまでは言えないものの、多少はプラモデルの後押しあってのものだろうからだ。同じ模型の国の住人である自分としては、この受賞によって少しはプラモデルという遊びに異なる方向から光があたればいいなと、しみじみ思うのである。