『ろくでなしBLUES』森田まさのり、アシスタントへお詫び 無駄にも見える作業は“旅館のお辞儀”と一緒?

 漫画家の森田まさのり氏が自身のXで展開している、「アシくんすまん。」シリーズの連投が続き、「アシくん=アシスタント」への“お詫び”が加速している。

 発端は2月12日のポストだ。森田氏は以前から『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』『べしゃり暮らし』など自身のヒット作について、主に作画やセリフのミスを中心にセルフツッコミを行う「なかったことにしたい」シリーズを展開していたが、そのなかで、ページ内に余白を作らない、いわゆる「断(裁)ち切り/断(裁)ち落とし」になったコマを紹介。アシスタントが背景を丁寧に描き込んだにもかかわらず、大幅にカットされてしまったことに対して言及し、その後「アシスタントくんがせっかく頑張って原稿用紙の端っこまで描いてくれたのに、印刷で断ち切られて陽の目を見ることのなかった素晴らしい背景をいつか見てもらいたい」と語っていたのだった。

 そうして「アシくんすまん。」シリーズが誕生。原画と掲載ページの内容を比較するポストが連投されており、2月18日に「その1」に始まり、3月3日には「その14」まで至っている。そのスピード感から、思いつきでスタートした企画というより、森田氏が以前から「断ち切り」について思いを巡らせていたことが伝わってくる。

 実際のポスト見ると、例えば『ろくでなしBLUES』で描かれた後楽園ホール、『ROOKIES』の野球場、『べしゃり暮らし』のシアターモリエールやルミネ theよしもとなど、実在する、あるいはそれに近しい会場やシチュエーションについて、原画では背景や観客の姿が細やかに描かれていることがわかる。製本の際に大きくカットされているケースが少なくないようで、ポストを重ねていくごとに、森田氏はアシスタントに対する“申し訳なさ”が募っているようで、「無駄な仕事させてるなぁ…。」「このはみ出した部分を描くのにどれだけ時間かけた事だろうか…。ほんますんません…!」と本格的に謝っている。

 もっとも、断ち切られる部分の大きさに関してはともかく、作業工程上「はみ出し部分」の作画が求められるのはある程度、仕方がないことだ。森田氏は「一度アシくんから、はみ出し部分は描いても無駄じゃないかと言われた事があって、でも僕はそれでも描いてほしい的な事を言ったらしい。覚えてないけど、言うだろうなぁと思った。今も言います。すまん」とも語っており、3月4日のポストでは「ぼくは何故、印刷されもしないのにスタッフに原稿用紙の端っこまで絵を描かせるんでしたっけ? 切実な理由があったはずですが思い出せません。本当の事を知ってる人だけ教えてください」と語りかけた。

 これに対して、以前森田氏本人が「アシスタントに嫌味にならないように自然な感じでお金をあげたいから、枠外まで描かせて印刷に載らなかったお詫び料の名目で給料を増やすため」と語っていた、との声があり、“アシスタントの作画トレーニング&給料アップ”という粋な計らいだったという説も。

 さらに、「客が見えなくなるまでお辞儀する旅館みたいなもん」と表現していたという証言もあり、森田氏は「おー、絶妙に言い表してたな!」とコメントしている。併せて「ん?言い表してるか? いや嘘やろ!」と森田氏はツッコんでいるが、その“行為”自体に明確な意味や効果はなくても、その“姿勢”がサービス=作品全体の質にかかわってくる、という考え方は確かにありそうだ。

 いずれにしても、こうしてSNSで原画が公開されることで、一定程度アシスタント氏の苦労が報われ、かつファンサービスになっているのは間違いない。「コマの外に広がる世界」に思いを馳せたい漫画ファンも、ぜひ「アシくんすまん。」シリーズをチェックしよう。

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