『ろくでなしBLUES』森田まさのり氏、過去作の衝撃展開を「なかったことにしたい」 SNSでわかる人気作家の矜持

森田まさのり「なかったことにしたい」シリーズ

 現在「グランドジャンプ」で『ザシス』を連載中の漫画家・森田まさのり氏が、X(旧Twitter)上で展開している「なかったことにしたい」シリーズが面白い。森田氏が手掛けてきた『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』、『べしゃり暮らし』などの人気作について、納得できていないシーンを抜粋し、自ら指摘しているのだ。

 基本的には「誰か気づけや!」とツッコミつつ、掲載に至ってしまった作画ミスや誤表記などを取り上げる楽しいポストが多いが、8月20日に投稿された「なかったことにしたい。その20」では、作家としての切実な思いが明かされている。

「最終回へ向けて、色々考えた挙げ句やってしまった禁じ手。
やはり作品の世界観にはそぐわないし、他のやり方はないものか…、いやいやこれでこそあの終幕の展開を迎えられる…などと描いてる最中も悩んでました。
今思えばやっぱり…なかったな…。」

 というつぶやきとともに公開されたのは、お笑い/漫才をテーマにした人気作『べしゃり暮らし』より、主人公の上妻圭右が記憶を失ってしまったシーン。ファンは衝撃の展開に動揺しつつも、クライマックスでは「この事故があったからこそのカタルシス」を感じたものだが、いまの森田氏が描くとしたら……という「if」のストーリーも知りたくなってしまう。純粋に作品を楽しんだファンへの配慮もあってか、人気作家からこうした「反省」が聞かれることはそれほど多くない。森田氏が「記憶喪失」という物語上のスパイスを「禁じ手=安易なもの」と捉えて「なかったことにしたい」とまで語っているのは、妥協を許さず、いい漫画を作ることにフォーカスし続けている証拠だろう。

 一方、同じく『べしゃり暮らし』では、お笑いをテーマにした作品だけに、“なかったことにしたいギャグ”もあるようだ。8月22日の投稿では、「この人でなし! 人でなしブルース!」というセルフオマージュともいえるセリフについて、「こういうのが一番痛々しい。」と一言。もっともファンからは好評で、「リアルタイムで大笑いしました」「ファン心理くすぐる天才か」とのコメントが寄せられている。

 完結した作品に対して、作者がメタ的な視点でツッコミを入れる……ということには賛否あるかもしれないが、「青春」と言えるような過去の名作について、アクティブに語れる場を作者本人が用意してくれるというのは貴重なことだ。ある種の自虐ネタとしても笑わせられるので、ファンはぜひチェックしよう。

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