伝記は紙と相性がいい? 電子好調の中でも自叙伝本が堅調、 SNSとの意外な親和性と名刺代わりの需要

生成AIを駆使した伝記作成が問題に

  JB pressの小林啓倫氏の記事によると、著名人の訃報が出た瞬間に伝記を生成するという、“生成AIによるインスタント伝記”が誕生しているのだそうだ。曰く、ニューヨークタイムズ紙の元エグゼクティブ・エディター、ジョセフ・リーヴェルドが死去した際は、死の直後数日間のうちに、少なくとも半ダースの伝記がアマゾンで出版されていたのだという。

  小林氏は、「AIに書かせたものかどうかに関係なく、実在の人物の伝記を勝手に執筆・出版することはさまざまなトラブルを引き起こす。それをめぐる訴訟も数多く起こされている」と指摘している。言うまでもなく、他者が勝手に著名人の伝記をまとめるのは、倫理的な観点からも問題が多発しそうだ。

  その一方で、個人が、生成AIを使って自伝を書くのであれば問題ない。もちろん文章が書ける人は自ら書けばいいのだが、文章が書けないという人でも人生を活字にして記録を残したいと思う人もいるだろう。そういう人に向けたサービスとして、生成AIを活用し、自伝の執筆を代行するサービスが広がりそうだ。

  具体的には、生成AIと何度もやりとりをしたり、いつ何があったのかなど細かい情報を打ち込んでいけば、しっかりとした文章ができあがっていく。これなら自費出版を行う出版社などで需要が生まれるのではないだろうか。

新たなサービスが発展する可能?

  伝記や自伝はそれこそ出版文化が生まれた最初期の頃からある分野なのだが、デジタル化が進み、人間の生き方が問われるようになった時代だからこそ、確実に需要は広がると思われる。むしろ、AIが身近になればなるほど、人間は自分自身を見つめ直す機会が生まれそうだ。そうした風潮と自伝の相性はぴったりなのである。

  自伝出版ブームは、SNSで自身の身の回りの出来事や、文化祭や旅行などの特別なイベントを発信する文化を満喫しているSNS世代が、一定の年齢になった時に爆発的に広がってもおかしくない。黒歴史といわれがちな過去のXのポストや、Instagramの投稿なども、時間が経つと微笑ましくみえてきたりするものだ。そういった記録を紙の本にまとめるサービスは意義がありそうである。

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