柚木麻子、青山美智子、川代紗生……オーストラリアで人気の日本人作家は? 書店「Dymocks」レポート

オーストラリアで人気の日本人作家は?

 柚木麻子の『BUTTER』が全世界累計150万部超の大ベストセラーとなるなど、アメリカ、イギリスなど英語圏での日本人作家の活躍が目覚ましい。そんな中、筆者が暮らすオーストラリアでも邦人作家の本は注目を集めている。

 筆者は2024年8月にオーストラリアに渡航。そこから現地の書店を巡り、本にまつわるイベントやコミュニティなどにも多く参加してきた。その中で印象的だったオーストラリアの書店と、そこで扱われる日本の作品についてレポートしたい。

 今回紹介するのは、オーストラリアの老舗の大型チェーン書店Dymocks(ディモックス)だ。シドニーの中心地にフラッグシップ店を構え、頻繁に作家を招いたトークイベントを開催するなど出版と文化を支えている。

 シーズンごとにテーマを設けた選書を書店独自で行なっており、ショーウィンドウには注目書籍をイメージしたデコレーションが施される他、フリーペーパーにはブックリストが並ぶ。テーマはバレンタインなどシーズンに関わるものから、旅をテーマにしたものまで様々。大手出版社と提携して、ペンギンブックスのサマーリーディングフェアなども開催している。日本の書店でいうナツイチのようなものだが、通年を通して様々な視点から選書されており、いつ行っても目新しい本との出会いがある。

 加えて、こちらのフラッグシップ店は本好きにとっての聖地のような存在だ。英語圏では読書が好きな人のコミュニティやブッククラブ、ファンタジーシリーズのファンダム文化が日本以上に加熱しており、特に大ヒット作『Fourth Wing(フォース・ウィング)』シリーズは多くのファンを抱える。そんな『Fourth Wing』シリーズが2025年1月にシリーズ最新作『Onyx Storm(オニキス・ストーム)』を発売した際には、Dymocksで「本の入荷とともに購入できる」深夜のリリースイベントを展開。深夜とも早朝ともとれる時間帯にたくさんのファンが集まり、Dymocksの外には長い列ができるほどだった。届きたての新刊を段ボールから開封する様子などがTikTokで公開されており、Z世代からミレニアル世代まで幅広い層がイベントを楽しんでいることが伺える。

@dymocksbooks What a night! (or should we say morning..) Happy release day to Onyx Storm ⛈️🐉🔥 Thanks for joining us for the midnight launch at our @Dymocks Sydney store we had a blast and we hope you did too, now it’s time to dig into Onyx Storm. #onyxstorm #fourthwing #ironflame #rebeccayarros #booktok #romantasy #fanrasy #bookrecs #dymocks #dymocksbooks @Hachette Books ANZ ♬ original sound - dymocksbooks

 日本の書店ではなかなか見かけない若年層の盛り上がりに、まだまだ本には多くの可能性が秘められていることを痛感させられた。

 最後に、日本の作品の取り扱いについても紹介したい。Dymocksフラッグシップ店では翻訳書コーナーが設けられており、英語以外の言語から翻訳された小説が並ぶ。英語以外の言語と言いつつ、昨今の日本人作家ブームもあってか、日本を中心としたアジア圏の作品が多い印象だ。望月麻衣の『満月珈琲店の星詠み』や青山美智子の『お探し物は図書室まで』には小さな猫が描かれているが、この特徴的な表紙の2冊はDymocksの他店舗および他の書店でも頻繁に見かける。さらに『BUTTER』で大ヒットした柚木麻子の『ナイルパーチの女子会』は2026年3月に英訳版が刊行され、やはり一番目立つ場所に並んでいる。さらに別のDymocksの店舗では、筆者がかつてインタビューさせて頂いた川代紗生の『元カレごはん埋葬委員会』の翻訳版が翻訳小説の棚ではなく、一般のフィクションの棚に面陳列で置かれており、注目度の高さが窺えた。海を超えた日本の作品との再会は嬉しいものだ。(「元カレが好きだったバターチキンカレー」考案者・川代紗生に聞く、復讐心を埋葬する方法

 読書をする人の数は年々減っており、出版業界が厳しいのはどの国も変わらない。とはいえオーストラリアにいると、本に関する嬉しいニュースもたくさん飛び込んでくる。街中では書店のトートバッグやSydney Writers' Festival※のトートバッグを愛用する人を見かけるし、地下鉄ではKindleやペーパーバッグで読書をする人も多い。さらにZ世代もInstagramを通してブッククラブを主催し、本を通して積極的に人と出会い、意見を交わす。本を取り巻く環境にも、まだ明るい未来があるのだと感じられるのだ。

(※Sydney Writers' Festival シドニーで毎年開催される、世界的に著名な文学の祭典。作家による文学に関する活発な議論やトークショー、討論会、講演、サイン会などが行われる。)

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