大人VS子供、秩序VS放埒、不純VS無垢……『ガンダムZZ』の対立軸から“ニュータイプ”の位置づけを考察

『ガンダムZZ』第19話レビュー

 『機動戦士ガンダム』シリーズにおいて、何かと不遇な『ガンダムZZ』。はたして本当に“見なくていい”作品なのか? 令和のいま、ミリタリー作品に詳しくプラモデルも愛好するライターのしげるが、一話ごとにじっくりレビューしていく。

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【連載第一回】第一話から「総集編」の不穏な幕開け
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第19話 プルとアクシズと

[あらすじ]

 アクシズ周辺に大量に散布されたダミー隕石の中を、乗艦サダラーンに乗って出発するハマーン。その周囲で、ジュドーの乗ったZZガンダムも大量のダミー隕石に紛れてアクシズ周辺にとどまり続けていた。

 

 アクシズ内では、グレミーがビーチャとモンドに対して、ルー・ルカとジュドーの関係について問いただそうとしていた。ルーがジュドーに惚れているとモンドに聞かされたグレミーは激昂するが、そこにZZガンダムに乗ったジュドーが乗り込んでくる。ジュドーはリィナを奪還するため、ZZガンダムを手土産代わりにアクシズに取り入ろうとするが、ジュドーを嫌うグレミーによって手足を縛られた上で拘束されてしまう。

 

 一方、ビーチャとモンドはZZガンダムの再塗装を命じられる。アーガマになんとかして戻りたい二人は、ZZガンダムに乗って脱走することを考える。そのころ拘束されているジュドーの元には、リィナの居場所を教えるためにプルがやってきていた。しかしジュドーはプルを拘束しかえし、通気口から脱出する。

 

 アーガマからは、ダミー隕石に隠れてルーの乗るZガンダムとエルの乗るガンダムMk.Ⅱが出撃。ブライトはアーガマ搭載のハイメガ砲でアクシズのエンジンを破壊する作戦を立て、射程距離到達前にジュドーとZZガンダムを確保するつもりでいた。充分アクシズに接近したルーとエルはダミー隕石の偽装を剥ぎ取り、メガライダーに乗ったMk.Ⅱとバズーカを持ったZガンダムで奇襲をかける。

 

 アクシズ内ではビーチャとモンドがZZガンダムを起動させて逃走を開始。それをグレミーがバウで追う。巻き込まれたジュドーは2機のモビルスーツに貼り付くが、そこにMk.Ⅱとメガライダーが突入。アクシズのドック内で、敵味方が入り乱れた戦闘が始まってしまう。混乱の中でジュドーはZZガンダムからビーチャとモンドを降ろし、自らが操縦を取り戻す。

 

 そこにキュベレイに乗ったエルが乱入。エルはジュドーに対して激怒し、コクピットに拘束したリィナを見せつけて帰してほしかったら追ってこいと挑発する。ジュドーはキュベレイを追ってアクシズ内に侵入してしまい、グレミーはエルのMk.Ⅱに膝蹴りを入れて離脱。メガライダーに乗ったまま、Mk.Ⅱは敵の追撃を受ける。

 

 その頃、ルーはアクシズの外でネオジオンのモビルスーツと激闘を繰り広げていた。そこにアーガマが接近し、アクシズを射程内に収める。

 

 キュベレイとZZガンダムはアクシズ内の居住区に突入。プルはジュドーに「遊べ」「リィナを返したら行っちゃうんだろう」とわがままを言い、リィナとジュドーが再開したタイミングでニュータイプとしてのパワーを発揮する。プルのキュベレイと対峙するジュドーだが、ファンネルの攻撃に翻弄される。居住区での戦闘で多数の犠牲者が発生。自分を一番に考えてくれないジュドーに対して感情と攻撃をぶつけるプルだったが、リィナから「このまま戦い続けるとジュドーはプルを憎む」と聞かされたことでサイコミュをオーバーヒートさせてしまい、ファンネルの制御を放棄。そこにグレミーのバウが割り込み、コクピットに乗ったままのリィナごとキュベレイを回収してしまう。

 

 ジュドーはバウを追って宇宙に出つつ、エルのMk.Ⅱと合流する。ジュドーらの脱出を知ったブライトはハイメガ砲をアクシズに向けて撃とうとするが、居住区の市民の姿を直接見たジュドーは砲撃を止めようとする。しかし、エルとルーはアーガマの前に立ちはだかったZZガンダムを引っ張って移動し、ハイメガ砲はアクシズのエンジンに向かって放たれた。

 

 キュベレイとバウはネオジオンの戦艦サンドラへと帰還。またしても兄と引き離されたリィナは涙を流す。一方、ジュドーは命令違反の罰として、ビーチャとモンドと共に懲罰房に入れられてしまう。

大人の世界の論理を受け入れたエル

 多彩なモビルスーツや支援メカが登場し、ロボットアニメとしての『ZZガンダム』の面目躍如といった感がある19話。ダミー隕石の中をパトロールするザクⅡでネオジオンの窮乏ぶりを演出するなど、冒頭から見どころが多い。

 特に目を引くのが、エルのガンダムMk.Ⅱが跨った最新装備、メガライダーだ。モビルスーツを乗せる巨大なバイクのような見た目であり、サブフライトシステムとしての飛行能力と機首に取り付けられたメガ・バズーカ・ランチャーによる大火力を持った機体である。いかにも玩具・プラモデル向きのガジェットで、19話ではアクシズに突入するための火力を発揮し、ドックの中を駆け回って活躍する。のちの『機動戦士Vガンダム』ではV2アサルトバスターガンダムのようなプラモデル向きな機体をあまり活躍させなかった富野監督だが、今回はちゃんと新ガジェットを暴れ回らせている。

 さらに、ルーの乗るZガンダムがバズーカを背負ってアクシズへ突撃してきたのも印象深い。「たった2機でZZガンダムとジュドーを救援しなくてはならない」という緊迫した状況が伝わってくるセットアップで、実際に劇中でも惜しみなく発砲していた。さらにしばらく時間が経過した後の戦闘シーンでは、ルーはこのバズーカをすでに使っていない。これは戦闘中に弾の切れたバズーカを放棄し、機体に取り付けられた通常武装に切り替えたことを示しているのだろう。また、今回のルーは単機で敵を引きつけるというハードな任務を命じられているにも関わらず、連続して出現した敵機4機を続けざまに撃破。Zガンダムの性能もあるとはいえ、エースパイロット並のスコアを残している。

 一方、重武装を背負ってアクシズに突入し、ジュドーとZZガンダムを回収するという任務を見事に果たしたルーやエルと異なり、今回もジュドーは自分の感情に正直に行動している。戦況よりも自分の妹の救出に躍起になり、さらにアクシズ内の市民を目撃したことからアーガマのハイメガ砲の前に立ちはだかって発砲を妨害。最終的には懲罰房へ放り込まれてしまう。

 アクシズ市民への被害を訴えてハイメガ砲の前に立ちはだかったジュドーに比べると、エルとルーの行動はずっと軍人らしい。今回の二人の大活躍ぶりを踏まえると、ZZガンダムをハイメガ砲の射線の外に引っ張っていくエルの「私たち戦争やってんのよ!」というセリフの重みも違ってくる。ジュドーら不良少年たちの中でも、ひと足先に大局を受け入れ、大人の世界の論理を受け入れたのがエルだったのかもしれない。

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