コミケの転売はなぜなくならない? 地方在住者にとって行きづらくなった事情とは
なぜコミケから転売屋がいなくならないのか?
日本最大の同人誌即売会である「コミックマーケット103」が閉幕した。コミックマーケット(以下、コミケ)でも転売屋(転売ヤー)の存在が問題視されている。さっそく、フリマサイトには頒布されたばかりの同人誌が多数出品されており、「転売屋から買わないでください!」という呼びかけが各所から起こっている。
【写真】人気イラストレーターによるコミケのカタログやAmazonでも人気の企業パンフレット
転売については賛否両論あるのだが、記者は、転売屋をなくすのは難しいとみている。例えば、記者の周りの地方在住者に話を聞くと、転売屋を利用している人がごくごく普通にいるのだ。特にコミケでは需要が大きい。その理由は「東京に買いに行くのはお金がかかる」「行列に並びたくない」「行列に並んでも買えないリスクが大きい」ためで、確実に購入できる転売屋を利用するというわけだ。
特にコミケの場合、あくまでも頒布されているもののメインは同人誌、同人グッズである。行列ができる大手サークルであっても個人が主体であることが少なくなく、企業などとは異なり、通販や増刷に対応していないケースが多い。そのため、「どうしても欲しい」という人の需要を見込んだ、転売屋のニーズが極めて大きくなってしまうのである。
地方在住者が転売屋を利用する理由
記者は地方を取り巻く社会問題を取材しているのだが、地方在住者にとって近年、コミケは非常に訪問しにくいイベントになっている。そもそも、地方在住者にとっては東京に行くだけで交通費などの負担は大きい。年に2回行われるコミケは8月のお盆の時期とと12月の年末に行われている。つまり最もハイシーズンに行われているため、宿泊費も高騰する。
それに加えて今年はインバウンドの回復に合わせて、東京のホテルの宿泊料金がかなり値上がりしている。もともと東京は慢性的にホテルの室数が不足しており、予約が一層とりにくくなった。さらに、某ホテルなどはコミケの需要を見込んでいるのか、12月30日には目を疑うほど凄まじい価格設定にしていたりするのだ。
そのため、地方在住者にとっては交通費などの費用を考えると転売屋から買った方が安いうえ、売り切れのリスクもないため、利用者が後を絶たないのだ。さらに3年半に及んだコロナ騒動の影響で、地方在住者は旅行に対し抵抗感を植え付けられた人が一定数いるといわれる。こうした事情もあって、地方在住者から転売屋のニーズは依然として高いと考えられる。
大手サークルに並ぶと本がほとんど買えない
コミケの入場についても、かつてはフリー入場であったが、近年になって入場料がかかるようになった。入場券は当日売りもあるのだが、「コミケ103」の1日目の様子をXで見ていると、午後の入場でも確認作業などで入場に時間がかかっていたと報告がある。これでは、滞在時間はかなり少なくなるだろう。当日思い立ち、フラッと出かけて同人誌を買いに行くのはなかなか難しいようだ。
さらに、コミケに参加をした人ならわかると思うが、大手サークルの行列に並ぶと数時間の行列はザラである。目当てのサークルが何件もあり、それらがことごとく大手の場合はほとんど本を買えない例が少なくない。したがって、当日に参加した人もこっそりと転売屋から買っていたりするものなのだ。転売屋が中古ショップに流した在庫を買っている人は、多いのではないだろうか。
転売屋がいなくならないのは転売屋から買う人がいるためなのだが、東京在住者と地方在住者の大きな格差、そしてコミケ特有の様々な事情が、転売屋を根絶できない大きな要因の一つになっているのは間違いないだろう。
こうした問題はコミケに限ったことではない。ライブなどのイベントのグッズや、それ以外の嗜好品全般にもいえることである。2024年は、長引いたコロナ騒動の影響があらゆる分野に露呈しそうな予感がするのだが、転売も一つの社会問題として考える必要がありそうだ。