空耳アワー辞典、ダイヤグラム研究本……TL、BLだけじゃない! コミケの魅力はニッチな「同人誌」にあり

■出版社も本屋さんも扱わない? 商業誌では見られないニッチすぎる同人誌がたくさん

コミックマーケットが行われる東京ビッグサイト。photolibrary https://www.photolibrary.jp

 12月30日から、日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット103」が2日間にわたって開催される。それに先立ち、早稲田大学負けヒロイン研究会の箱部ルリ氏の執筆した、コミックマーケット(以下、コミケ)に関する原稿「コミケの時代の終わり―BLも、ニッチな本も消えていく」が大きな話題を呼んでいる。

 漫画はWEBTOONの登場や電子書籍の台頭によって、大きな変革期にあるといわれるが、同人誌も同様である。発表の手段が電子書籍という方法でも行われるようになり、コミケなどのいわゆる同人イベントに参加しなくても頒布が可能になった。さらに、大規模な同人誌即売会は他でも開催されるようになっている。

  それでもコミケは圧倒的なブランド力をもち、他のイベントにはない強みをもっているといわれる。それは、とにかくマニアックであり、「こんな本を出しているサークルがあるの?」と驚愕するほどニッチなジャンルの同人誌を購入できる点にある。これは他の同人誌即売会では得難い体験であり、コミケに根強いファンが多く、コミケを他のイベントが代替できない理由ともいえる。

  いわゆる研究系、評論系の同人誌こそが、コミケの醍醐味だと語る人は多い。一例を挙げるとするならば、「タモリ倶楽部」の空耳アワーの研究を行っている「空耳アワー研究所」のように、公式では決して出版されることがない、独自の研究本を出しているサークルがある。同サークルの大作『空耳アワー辞典1992-2023』は、放送開始から最終回までの歴代作品を網羅した同人誌となっている。

  廃墟巡りなどの記録をまとめたサークルも多いし、鉄道研究のサークルも王道の写真集からダイヤグラムの研究まで、安定した盛り上がりを見せている。他にも、日本酒やワインの研究、国内外の旅行記、理系の研究本、さらに大学の漫画研究会の部誌・会誌などなど、商業誌ではなかなか制作されることがないジャンルも多く、同人誌ならではの面白さが表れているといえるのではないだろうか。

  いわゆるBLや美少女系、ジャンプ系などといったメジャーどころの同人誌や、コスプレ、企業ブースなどが注目されがちだ。しかし、それ以外のサークルに目を向けると一層楽しくなるし、そうした同人誌が多数頒布されている点が、コミケが今後も衰退しないと考えられる要因でもある。

  コミケほどいい意味で雑多で、なんでもありなイベントは、あらゆるイベントを見渡しても存在しないのではないだろうか。いわゆる大手の壁サークルやコスプレを目当てにいくのももちろん楽しいのだが、普段覗くことがないジャンルの“島”を散策してみてはいかがだろう。新しい趣味への扉、新しい出会いが待っているかもしれない。

コミケの時代が終わる? 賛否両論の原稿とファンの声から見えてきた日本最大の同人誌イベントの強み

コミケは過渡期にある   12月30日から、日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット103」が2日間にわたって開…

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