私人逮捕系YouTuberは正義のヒーローではないーー弁護士が指摘する問題点
「仮にその相手がやっていることが法に違反する、あるいは倫理に反することだとしても、勝手に撮影してそれを無許可で公開すれば、名誉毀損罪に該当する可能性も出てきます。相手が違法な行為をしているからといって、名誉毀損に該当しないというわけではありません。
昔からフィクションの世界では、法では裁けないような悪人を成敗するタイプのヒーローが数多く描かれてきました。そういうイメージをなぞって行動しているのかもしれません。しかし、結局のところそのようなYouTuberはいかにアテンションを集めて収益化するかという考えのもとに動いているわけです。『私人逮捕』という法律用語があるからといって、そういった行動に何か法的・道徳的な正当性が与えられるわけではありません。その点に勘違いがあるように思います」
フィクションの世界で描かれる、国家権力とは異なる正義や仁義あるヒーローたちの活躍は痛快であり、多くの人々にとって憧れとなるのも無理のないところだろう。杉田一明容疑者がコスプレをしていた『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎もまた、「宵闇に紛れて惡鬼の手から只人を護り続けて来た」組織である鬼殺隊の一員だった。しかし、日本が法治国家であるかぎり、個人が個人を私的に罰する権利はない。もしも本当に自警団として治安維持に貢献したかったのであれば、地域社会でハッピを着て「火の用心」の夜回りに参加するなど、もっと別の有意義な方法があるのではないだろうか。