【漫画】依頼者の相談は他人事? 冷静すぎる弁護士がネットトラブルを解決する『しょせん他人事ですから』が面白い

今読みたいリーガルコミック『しょせん他人事ですから』

 インターネットが普及してからというもの、病院や法律事務所、施設の口コミを事前に調べられるようになった。時折、そのなかで特定の弁護士や医療者などを批判したコメントを目にする。弱った精神状態でいると、淡々と業務をこなす弁護士や医療者は冷淡に見えることもあるかもしれない。

 ただやさしい人=仕事をきっちりしてくれる人とは限らない。仕事だと割り切って関わっていたら、時折患者や依頼者に「冷たい」と言われてしまう。しかし寄り添いすぎると、弁護士や医療者が冷静な目で物ごとを見られなくなったり、仕事をしている自分自身が病んでしまったりすることがあるのではないだろうか。

 そんな問題を突き付けたのが、漫画『しょせん他人ですから~とある弁護士の本音の仕事~』(白泉社)だ。

 『しょせん他人事ですから』はタイトルが内容を表している。つまり依頼者の身に起こっていることを他人事として割り切る弁護士が主人公なのだ。彼の名前は保田理(やすだ・おさむ)でインターネットに関する事案に強い。いつも笑顔なので、一見あたたかみを感じるのだが彼の事務所には「他人事」と書かれた掛けじくがある。依頼者に寄り添わない保田は、よけいなこともお世辞も言わず、淡々と業務をこなす。

 もうひとりのレギュラーキャラクターは、弁護士の業務を補助するパラリーガルの加賀見灯(かがみ・あかり)だ。彼女は冷淡に見える保田のツッコミ役のような存在で、依頼者にもっとやさしくしろと彼に言う。加賀見との対比によって、依頼者の相談を「他人事」と割り切る保田のキャラクターがより確立され、しだいに依頼者に寄り添わない弁護士の良さがわかってくる。

 依頼者の話を聞けと言う加賀見と、雑談はせずに必要なことだけを述べさせる保田。そのコンビネーションは絶妙だ。このコンビのおかしさを時に感じながら物語は進む。最初のエピソードは、現代の膿とも言える事案だった。

 依頼者は桐原こずえ、主婦のブロガーである。節約レシピや、ママ向け財テクを紹介するブログを運営して人気を博しており、節約レシピ本も出している。ところがある日、彼女は大手掲示板に「人妻風俗をしている」といった内容を書かれてしまう。その後、掲示板やSNSでも炎上してしまい、個人情報である電話番号まで載せられてイタズラ電話がかかってくる。彼女は無料の法律相談会があること、インターネットの事案に強い保田という弁護士をがいることを知って予約する。

 弁護士に頼りたい多くの人は、みんな心が弱っていて感情的になっている。一刻も早くそれぞれが抱えた事態を解決したいからだ。彼らは自分に寄り添いながら問題を解決してくれる弁護士を探している。

 しかしニコニコしながら保田は、それが法的に見てどうなのかを淡々と話して依頼者たちを激怒させていた。保田のもとに来て、自分の身に起きたことを話し始め、すぐに泣きだした桐原に対しても同様だった。彼女に対して「泣いてないでちゃんと説明してください」と冷静な言葉を放つ。すぐに保田はパラリーガルの加賀見に叱られるのだが、その発言は弁護士として理にかなっているように思う。

 無料相談会は相談の時間が短い。もっと話そうとすると、高額の相談料が必要になる。彼女は戸惑うが冷静になって話をするようになり、帰宅後悩んだあげく、保田に依頼をしようと決意をする。相談内容を聞いた保田は、書き込みのサイトを消す「削除申請」をしたいのか、書き込んだ相手を特定する「情報開示請求」をしたいのか尋ねる。ニコニコしながらも辛辣な保田は、法律にのっとった立場で依頼者と一定の距離をおく。

 必要なことを、シンプルに。そんな保田の弁護士としてのスタイルは、インターネットの口コミで批判の的になっている。一方、数少ない好意的な書き込みもあった。口コミはあくまでも依頼者たちの主観である。法律家として優秀かどうかはまた別の話だ。

 覚悟を決めた桐原に対して、保田はこれまでニコニコしていた表情を変える。これも見どころのひとつだ。情報開示請求を求めた桐原は、思いがけない人物が、自分をインターネットで中傷していたと知る。

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