頂き女子りりちゃん事件で波紋、ホストクラブ法規制の論点は? 弁護士の見解を聞く

ホストクラブ法規制の論点は?
佐々木チワワ『「ぴえん」という病SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)

 “頂き女子りりちゃん”こと渡邊真衣容疑者が、複数の男性から2億円以上を騙し取り詐欺容疑で逮捕され、彼女から4000万円を受け取った新宿歌舞伎町のホストクラブ「clubLATTE」所属のホスト・田中裕志容疑者と同店責任者・橋本一喜容疑者も組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕された事件に大きな注目が集まっている。

 近年、ホストクラブ業界は空前のバブルを迎えているという。『「ぴえん」という病SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)の著者で、ホスト業界に詳しい佐々木チワワ氏の調査によると、最大手ホストグループの『グループダンディ』からは、2021年に1億円以上売り上げたホストが31人輩出されたそうだ。(参考:『マネーポストWEB』コロナ禍で空前のホストバブル 歌舞伎町新記録「年5.2億円」売上のホストが誕生

 をのひなおによる漫画『明日、私は誰かのカノジョ』では、いわゆる“ホス狂”の女性・ゆあ(優愛)のライフスタイルを描いた「ホスト編」が多くの読者の共感を得て、同作のヒットを後押しした。一部の女性の間ではホストに貢ぐことによって承認欲求を満たすのが、トレンドにさえなっているようだ。

 ホストクラブ業界が興隆する一方で、弁護士の小杉俊介氏によれば、ホストクラブ絡みの法律相談が目立って増えているという。



「ホストが女性の飲み代を立て替えて、後にその立て替えたお金を時に強引に取り立てるという、いわゆる売掛の制度自体の問題は以前からありました。その業態が近年、大きく変わったという話は聞きませんが、ホスト業界が拡大して、お金の流れが大きくなるに連れてトラブルが増えているようです。

 この業態の問題は二つあって、一つはシャンパン一本が数百万円もするような値付けが本当に有効であるのかという点。お客さんが納得して伝票にサインをしたからと言って、それが法的に常に有効と言ってよいのか。双方合意の上だから問題ないというのが建前です。しかし、「恋愛感情その他の好意の感情」を利用した契約について取消しを認める消費者契約法第4条3項4号に該当し得るとも考えられます。キャバクラなども似たところはありますが、単純に額があまりにも違うので、特に問題視されているのでしょう。

 もう一つは、ホストクラブに対してホストが売掛金の責任を負うというシステムの是非について。売掛金の回収はホスト本人が行うのですが、法的な知識のない素人なので、かなり荒っぽいことも平気でやってしまうケースがままあります。売掛金が払えなくなって地元に帰った女性を執拗に追ったため、事件化したこともありました」

 トラブルが増加したことに伴って、ホストクラブを法規制すべきとの世論が高まっているのは当然だろう。しかしながら、今回の田中容疑者と橋本容疑者の逮捕に関しては疑問があると小杉弁護士は続ける。

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