東海オンエアはなぜ大騒動を沈静化できた? その理由と10周年記念本『天啓』への期待

東海オンエア10周年記念本『天啓』への期待

 人気YouTuberグループ・東海オンエアをめぐる騒動が混沌とした状況から一転、前向きに見える結末を迎えた。そんななか、グループの10周年記念本『天啓』(KADOKAWA/12月15日発売予定)がAmazonをはじめとする書籍販売サイトの予約で好調を維持。今回の騒動を受けて、発売日や内容に変更があるのか注目されるところだが、本書のオビにある「夢も目標も要らない。この6人で、この場所で、いつまでもただ遊ぼう」という言葉が違った意味を持つことは間違いないだろう。

 一時はSNS上で「解散」という言葉すらも浮上していた今回の騒動。簡単に経緯をまとめておくと、東海オンエアのメンバー・しばゆーと、その妻でインフルエンサーのあやなんがSNS上で激しい口論を繰り広げ、そのなかでグループのリーダー・てつやとの確執も表沙汰に。それぞれに意見の食い違いもあり、グループと家庭の板挟みになったしばゆーが暴発、各方面への暴言や不適切な動画をポストする事態に至っていた。

 約700万人のチャンネル登録者を抱える人気グループに降って湧いた問題を面白がる人々も多く、騒動は瞬く間に拡大。SNSのトレンドに上がり続けたが、10月25日に公開された東海オンエアの動画によれば、グループは活動休止期間に入り、12月16日に有明アリーナでの開催が予定されていた大型イベントは中止が決定したものの、メンバー6人の関係性に決定的な亀裂が生じることはなかったようだ。しばゆーのグループ脱退はひとまず回避され、前出の『天啓』についても、刊行に向けて前向きだと伝えられている。

 しばゆーは現在治療中とされ、ファンも無邪気に喜べる状況ではない。しかし騒動の大きさを考えると、現状のところ、負の影響は比較的小さく抑えられたと言っていいだろう。その理由はいくつか考えられる。

 ひとつには、今回の騒動がそもそも迷惑行為や違法行為に端を発したものではなく、いわば「身内同士の問題が大きくなり、結果として多くの人に迷惑/心配をかけた」ものだったこと。基本的には当事者同士が和解すれば沈静化する問題であり、その点、当初はあやなんに厳しい言葉を投げかけていたものの、速やかに矛を収めて謝罪を行なったてつや、およびそれをサポートした東海オンエア側の対応がよかったと言えるだろう。

 また、彼らにとってクライアントとなる大人たちが静観したことも大きかったはずだ。騒動の最中にも東海ラジオのレギュラー番組『東海オンエアラジオ』は変わらず放送され、また彼らを「観光伝道師」に任命している地元・愛知県岡崎市にも動きはなかった。

 『東海オンエアラジオ』は全国にリスナーを抱える人気番組であり、また財務省広報誌『ファイナンス』令和4年12月号に掲載された記事「自治体マネジメントが作る持続可能なまち」(茨城県境町 町長・橋本正裕氏)によれば、東海オンエアが岡崎市にもたらしている経済効果は「年間約40億円、移住者の年間消費額は約2億円と推計」。東海オンエアを信じて静観したというより、単純にビジネス上の判断と見ることもできるが、「身内の問題」で済まない騒動に発展しつつあるなかで、取引先から責任を問う声が上がっていたとしたら、問題を小さく収めることは難しかっただろう。

 さらにファン目線で言うと、破天荒だが憎めない、しばゆーの“愛されキャラ”も影響しているように思える。今回、業界の大先輩で所属事務所の最高顧問でもあるヒカキンにすら暴言を浴びせたしばゆーだが、本来の優しく楽しい人柄は業界の共通認識だ。「療養中」という同情すべき状況を差し引いても、“口撃”を受けた当事者のなかで本気で憤慨している人は少数なのではないか。

 本人たちの間でいったいどんなことがあったのか、本当のところはわからない。「これだからYouTuberは……」と肩をすくめる人の気持ちもわかるし、今回の件でチャンネル登録を解除したというファンがいるのも頷ける。しかし週6日、彼らが体を張ったバカバカしい動画を楽しみにしてきた立場からすると、反省すべきところは反省して、また仲のいい姿を見せてほしいと思う。10周年記念本『天啓』の内容は場合によっては大きく変わるかもしれないが、「この6人で、この場所で、いつまでもただ遊ぼう」という言葉が、より強い誓いとして残ってくれることに期待したい。

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