俳優でYouTuber、岸田タツヤが語る本郷奏多&東海オンエアとの日々 「並大抵のことでは、彼らの横には並べない」

岸田タツヤが語る、俳優とYouTube

 俳優業とYouTuberとしての活動を全力で両立させている岸田タツヤが、初のフォトエッセイ『岸田タツヤと変な人たち』を上梓した。本書はなんと、表から読むと「俳優バージョン」、裏から読むと「YouTuberバージョン」の“両A面”仕様。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』リュウソウブラック/バンバ役でブレイクを果たしながら、敬愛する人気YouTuberグループ「東海オンエア」のお膝元・愛知県岡崎市に動画クリエイターとしての拠点を設けて日々活動する彼の思いが詰まった一冊で、立場や肩書きを超えて「すごいものはすごい」「面白いものは面白い」と言い切ってくれるような、痛快な内容だ。

 客観的に見れば、岸田タツヤ自身も十分に「変な(すごい)人」だが、自己評価はかなり控えめで、周囲の人々へのリスペクトや感謝が、本書の随所から伝わってくる。そんな彼に、大親友・本郷奏多や東海オンエアメンバーとの交流を中心に、これまでの歩みと本書制作の経緯を振り返ってもらった。(編集部)

【インタビューの最後に岸田タツヤさんのサイン入りチェキプレゼントあり】

「頑張って95点をとっても、周りが100点だから一番下(笑)」

――菅田将暉さんや本郷奏多さんという名前と、6面ステーション(※2011年から活動するYouTuberグループ。ギャンブルネタなどコアなコンテンツが魅力)やサチオさん(※愛知県岡崎市でラーメン店/居酒屋を経営する名物店主)の名前が並列に語られるという、他ではあり得ない楽しい内容でした。俳優サイドとYouTuberサイドの“両A面”という、珍しい形の本になりましたが、どんな経緯で制作が進んだのでしょうか?

岸田タツヤ(以下、岸田):僕自身がいま、二つの顔を持っていると思いながら活動しているので、「本を出しませんか」というお話をいただいたときに、俳優サイドだけの本にしたくないな、と思ったんです。そこで編集の方々からいいアイデアをいただいて、ページをどちら側から開くかで内容が変わる本にしました。

――どちらから読んでも、「偶然」や「運がよかった」のように、常に「自分の力で勝ち取った」という感覚ではなく、周りの人への感謝の思いが綴られているのが印象的でした。先日、1ヶ月連続動画投稿の締めの配信でも、最初に視聴者への感謝があって、次にできなかったことへの反省があって、最後まで「やってやったぞ!」と自分を誇るような言葉が出てこなくて、その人間性が「運」を引き寄せるのではと。

岸田:そう捉えていただけるのはうれしいですね。僕なりに考えると、自分よりスゴい人にしか興味がないから、自然とそうなっているのかもしれません。結果的に、僕の周りにはスゴい人しかいなくて、頑張って95点をとったとしても、みんな100点だから一番下なんですよ(笑)。隣を見れば、チャンネル登録者数640万人で毎日頑張っているYouTuber(東海オンエア)がいて、映画『GANTZ』のような話題作にガンガン出演しながら、YouTubeでも60万人に迫る登録者がいる同世代の俳優(本郷奏多)もいる。他にもアーティストだったり、投資家だったり、僕が敵わない人ばかりなんです。


――その人と親しくなるほど、「ここは負けているかもしれないけれど、ここは勝っている!」と、自分の方が優れている部分を探しがちな気がするのですが、岸田さんはそうではありませんね。

岸田:自分のスゴいところを探しても、あんまり意味がないと思うんです。東海オンエアのりょうくん(参考:東海オンエア・りょう、YouTuber×現場監督の二重生活を明かす「まず、休もうと思うことを禁止した」)なんて、クリエイターとしても、事業の経営者としても本当に優れているし、僕は彼からもらった言葉を大事にしていて。例えば、「世の中には他責の人が多すぎる。そのなかで、外に責任を求めず、自分の責任として考えることができる人は、価値があると思う。たっちゃん(岸田)の一番いいところは、そこかもしれないね」って。あとは、いつも「“やれるか、やれないか”ではなくて、”やるか、やらないか”だ」と怒られています(笑)。

 もうひとり、僕を怒ってくれるのが(本郷)奏多で、彼も人の責任まで自分で背負おうとする人間なんですよ。子役から始まって、ここまで折れずにやってきた、本当に価値のある存在だと思うし、いくらお金を払っても足りないような、貴重な経験を聞かせてもらっていて。怒るのって、人のためにパワーを使うということだし、僕は本当に人に恵まれているなと思います。

――『岸田タツヤと変な人たち』というタイトルを見たときに、思い浮かんだのがまさに東海オンエアのりょうさんでした。りょうさんも、常に「自分はたまたま友だち(東海オンエアのメンバー)が面白いからここまで活動できている」という趣旨の発言をしていますし、自分も大概“変な人”なのに、周囲へのリスペクトに溢れているというか。似ている部分がありそうですね。

岸田:そうかもしれません。りょうくんとは一緒にいる時間が長くて、どこに行くにしても、「たっちゃん、行くよ~」って、迎えに来てくれるんですよ。僕らって何が似ているんだろう、ということもまさに話していて、そうすると、家庭環境からすごく似ているんです。彼の方が年下なんですけど、追いかけたい存在ですね。東海オンエアはもう十分に成功して、別の道に進んでもいいのに、いまもネタ会議を重ねて、YouTubeを盛り上げようとしていて。

――東海オンエアというグループは、大きくなったいまだからこそ、かえってバカバカしいことをやろうとしていますね(笑)。

岸田:そうなんですよ(笑)。ある意味では、動画のクオリティをあえて上げず、やりたいこと、やるべきことをやり続けていて。本当にリスペクトしています。

「ミーハーな関心だけだと、その先には何もない」

――またこの本を読んでいると、ゴルフにしても、アルバイトにしても、何事からも学ぼうとする姿勢が印象的でした。いまも、現在進行形で、俳優業で学び、YouTuber活動で学び、そこで得たものを相互に活かそうとされているのではと。

岸田:そうですね。大きな共通点として、どちらの活動も「カメラが回っている」というところがあって。俳優としては役を演じて、YouTuberとしては自分を表現する、という違いはありますが、厳密に言えば、俳優業でも自分を表現しているし、YouTuberとしても役割を演じている部分はあるんです。そのパーセンテージが違う、というだけだというか。俳優だけやっていたら、YouTuberの動画には脚本も役もなく、気ままに撮っているだけだと勘違いしていたかもしれないし、YouTubeだけやっていたら、俳優は役を演じるだけだと思っていたかもしれない。その二つを繋げられたことは、大きな学びになっていますね。

――求められている役割と、自分の個性をどんなバランスで出していくか。

岸田:そこに尽きると思います。何かに特化して、一つの道で結果を出す人は当然、素晴らしいと思いますが、そうでなければさまざまな活動をして、自分の価値を見出していくという道もいいんじゃないかなって。


――本の話でいうと、写真も見どころが多いですね。とにかくカッコいい俳優・岸田タツヤとして見ることもできれば、「キリッとした顔で黙っている方が 大概のことは上手くすすむ」などコメントが面白く、「タツ兄、やってんな」と見ることもできて。

岸田:『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019年3月17日~ 2020年3月1日/テレビ朝日)という戦隊ヒーロー作品の「リュウソウブラック」という役で僕を知ってくださった方も多いと思うのですが、メインキャストは放送終了後、写真集を出すのが恒例になっていて。ただ、僕自身は何も成し遂げていないなかで、写真集を作るという考えには至らなくて、今後も出すことはないだろうと思っていたんです。

 そのなかで、この本のコンセプトに合わせて撮影してもらうことになり、俳優としての面と、素の面を両方表現できてよかったなと思います。特に俳優サイドでは、広く活躍されている素晴らしいカメラマンさんに撮っていただいて、勉強になりました。ものすごくタイトなスケジュールで完璧に仕上げていただいて、「売れるってこういうことか~」と思ったり(笑)。YouTuberサイドは本当に普段の日常を記録したような感じで。東海オンエアファンのニーズは誰よりも理解しているので、わかる人はわかる、という嬉しいカットもあると思います(笑)。

――岸田さんはもともと東海オンエアのファンで、撮影現場で偶然出会い、意気投合。その経緯は本にも書いてありますが、いまでは東海オンエアの地元・愛知県岡崎市に拠点をつくり、交友関係を広げています。東海オンエアが有名グループだからではなく、単純に面白い人たちが好きだから、いまの活動をしているということが伝わってきます。

岸田:そうですね。ミーハーな関心だけだと、その先には何もないということがわかっていて、世間的にも「スゴい」人だったら、菅田将暉と仲良くできているだけで大満足ですから。本当に大きい出会いだったので、彼らと時間を共有するために、岡崎に家を借りる以外の選択肢はなかったです。


――さて、YouTuberは俳優より視聴者に近い存在で、時には心ないコメントを目にすることもあると思います。本当は言いたいこともいろいろあると思うのですが、どう折り合いをつけているのでしょうか。

岸田:確かに心にくることもありますが、いわゆる「アンチ」のような人たちが言っていることも100%間違っているわけではない、と捉えるようにしています。賛否があっての注目度だと思いますし、ヒカルさんなんて、そのあたりを本当に上手くコントロールしていますよね。もちろん、人に迷惑をかけるような悪いことは絶対にしてはいけないけれど、批判を恐れて丸まってしまうと、YouTubeの面白さはなくなると思うので、辛辣なコメントも上手く受け入れながらやっていきたいですね。

――例えば、「東海オンエアの人気に乗っかって……」のようなコメントも目にしましたが、そもそも東海オンエアも先輩YouTuberにフックアップされて人気に火がついた経緯がありますし、お互いに面白いと思うクリエイター同士がつながっていくのは、YouTuberとして当たり前のことだと思ったりもします。

岸田:そうなんですよね。本当に正直に言うと、「何も知らないくせに!」と思ってしまうことはあります(笑)。ただ、そういう方々に「知ってもらう」こと自体が大事な活動でもありますし、実際、僕がYouTuberとしてここまでやってこられたのは東海オンエアのおかげですからね。コメントを見た瞬間は理性より感情が先に出てしまうこともありますが、冷静に考えていきたいと思います。

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