今年のGWは愛知県岡崎市へ? 『るるぶ東海オンエア』で考える“地域密着型YouTuber”の実力

『るるぶ』に見る東海オンエアの実力

 687万人のチャンネル登録者を抱える人気YouTuberグループ「東海オンエア」をフィーチャーした旅行ガイド本『るるぶ東海オンエア』(JTBパブリッシング )が4月24日、発売された。彼らが拠点とする愛知県岡崎市の観光ガイドとしても、ファンブックとしても充実の内容で、今年のGWはこの本を片手に現地を巡るファンが急増しそうな気配だ。

 「YouTuber」というカルチャーをよく知らない人にとっては、“局地的な人気のあるヤンチャな若者集団”というイメージかもしれないが、彼らは岡崎市に全国からファンを集める、極めて重要な観光資源にもなっている。インフルエンサーが紹介した商品がたちまち売り切れに……というニュースは定番化して久しいが、一過性のものであるケースが多い。その点、東海オンエアは2016年から岡崎市の正式な「観光伝道師」を務め、地元の名所や飲食店に送客し続けており、これだけ“周囲”を潤わせているクリエイターはあまり思いつかない。週6で動画をアップし続ける彼らは今も“聖地”を増やし続けており、メインの活動自体が地域振興に一役も二役も買っているのだ。

 そんな東海オンエアをフィーチャーした『るるぶ東海オンエア』は、地域との不要な摩擦を避けるための配慮も見られる。アニメや映画の「聖地巡礼」で問題になるような行為について、「聖地を巡るときのお願い」として大きくまとめられているのだ。「不法侵入は絶対ダメ」「集団で騒がないようにしよう」「“写真のみ”は止めよう(※写真を撮るならその施設やお店をきちんと利用する)」「汚さない、傷つけない」「SNSでのアップに注意して(※許可を得ていない人の顔や個人情報が映り込んでいないかチェック)」など、一つひとつ見ていけば当たり前のマナーだが、現地でのファンの興奮を考えれば必要なページだろう。

 そのなかで面白かったのは、「岡崎に過剰な期待はするべからず!」の一言だ。岡崎市は観光タウンというより、“複数の河川が流れるのどかな地方都市”という雰囲気であり、その空気感を楽しむべし、とのこと。岡崎城をはじめとする名所旧跡もあるが、確かにレジャー施設等が豊富だとは言えず、東海オンエアの“聖地”も、ただの公園や小ぢんまりとした飲食店など、本来観光地にならないような場所が多い。もともと観光客が大勢くることを前提としていないスポットだからこそ、上記のような「お願い」を重ねる必要があるのだろう。いずれにしても、“なんでもない場所”をファンがよろこびに満たされる“聖地”に変えてしまった彼らの人気と実力をあらためて感じさせられるところだ。

 本書は『るるぶ東海』でも『るるぶ岡崎』でもなく、あくまで『るるぶ東海オンエア』だ。中心に据えられているのは岡崎だが、彼らが人気企画で訪れた他県/他国のスポットも網羅されており、これを参考に仲間と訪ねてみるのもいいだろう。コロナ禍で移動が制限されがちだったこの数年間の憂さを晴らすように、本書を片手に岡崎から近隣のスポットをまわってみてはいかがか。

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