『VIVANT』マニアは必読! 小説版で”伏線”と”考察”の解像度が爆上がり
ドラマでは分からなかった細かい情報
では、謎解き要素を楽しみにドラマを見ている人は本作を楽しめないのかというと、そうでもない。ドラマ『VIVANT』の第1話で誤送金された1億ドルの行方を追って、セドルという街に向かおうとタクシーに乗った乃木は、その車が砂漠の中を突っ走っていくのには興味を示さず、手元にある“何か”を見つめていた。ドラマでは何を見ているかには焦点が当てられず、陽気に話しているドライバーの声が耳に入ってこないほど物思いに耽っている乃木の様子が描かれた。
この時点では、乃木が見ているものが単なる書類のように見えていたのだが、本作ではそれが実は、「乃木の父親の40年後のシュミレーション写真」だったとはっきりと書かれている。ドラマでは第5話で乃木がアリ・カーン(山中崇)に見せているものだ。タクシーの中で見ていたものが書類ならば、乃木のどこか深刻そうな表情は、差額の9千ドルを何としてでも取り返したくて策を考えているように思えるが、父親の写真を見ていたとなれば、違って見えてくるのではないだろうか。
このように本作には、ドラマで映像にはならなかった細かな情報が記されている。これらは後からわかる伏線としてドラマをよりおもしろいものにしてくれるだろう。
ドラマだけでももちろん楽しめる『VIVANT』だが、本作があればさらに一歩深く、興味深い『VIVANT』の世界に入り込むことができる。今回、発売となった上巻で描かれているのはドラマの第5話まで。ここまでもなかなかスリリングだったが、第6話以降も予想を遥かに超えた怒涛の展開が繰り広げられている。
下巻の発売は9月下旬頃に予定されているよう。ドラマとはまた違った魅力のあるノベライズ本で、後半の展開がどのように描かれているのか。ドラマとともに、それも楽しみのひとつとなりそうだ。