『ガンダム 水星の魔女』第23話で展開された最高クラスのアクションと残された謎ーー最終話までハラハラ感が続く

 とにもかくにも最終決戦。『水星の魔女』第23話では、現在日本でテレビ放送しているアニメとしてはおそらく最高クラスのアクションが見られた。

 データストームを突き破り、スレッタの乗るキャリバーンはクワイエット・ゼロへと迫る。迎撃するエリクト=エアリアルは多数のガンビットを駆使してキャリバーンを攻撃し、データストームの影響を受けるスレッタは苦戦を強いられる。一方でシュバルゼッテに乗ったラウダの攻撃を受けた地球寮メンバーは、デミバーディングによってクワイエット・ゼロへと突入する。

 前回で「スレッタVSエリクト」「グエルVSラウダ」のバトルになることが明らかになっていたので、今回はオープニングからバチバチの殴り合い。キャリバーンにはガンビットがついていないため、多数のビットを使って攻撃してくるエアリアルに対しては多勢に無勢。そしてそもそもスレッタはエアリアルの撃破を目的としていない。そのため、キャリバーンのアクションとしては高速で飛び回りつつ敵の攻撃を回避する動きが多くなり、画面の中を目まぐるしく飛行することになる。

 前回は景気良くガンドノードを破壊していたキャリバーンだが、今回はこの「逃げるアクション」がメイン。今回のアクションは、飛び回る動きひとつとっても方向転換の動きにタメと力感があり、「スレッタ以外には不可能な激しい機動」をバリバリやっているという説得力があった。また、スレッタは逃げる動きの合間合間にガンドノードを撃墜しており、エアリアルとエリクトのサポートなしでも驚異的な腕前を持つパイロットであることが理解できるようになっている。

 タメとテンポ、力感に関して言えば、印象的だったのがクワイエット・ゼロの外壁に沿ってキャリバーンとエアリアルが飛びながら、ビームサーベルで斬り合うシーンである。牽制としてキャリバーンのビームを後方に発射しつつ、ビームサーベルを抜いて突っ込んできたエアリアルに対して即座に対応、同じくビームサーベルを使って切り結ぶ。互いの速度が速いためか、刃がぶつかったところで互いに跳ね飛んでしまい、それでも両機とも素早く姿勢を立て直して相手に突っ込んでいく。この「跳ね飛ぶ→突っ込んで切り結ぶ」動きのタメとテンポがカッコよく、ここだけ何回も見てしまった。

 一方、グエルとラウダの戦闘は純粋に一対一だ。ラウダがなんであんなにミオリネに対してブチギレまくっているのか、自分にはちょっとわからないところもあるのだが、兄に対するコンプレックスも絡んだラウダの怒りはマジである。それを表現するかのように、シュバルゼッテは搭載武装をフル活用して猛攻を加えてくる。

 ほとんど今回が初登場の機体だし、正直なところシュバルゼッテの攻撃方法については、細かいところについてはよくわからない部分も多かった。が、それでも『水星の魔女』をここまで見てきた視聴者なら「ほーん、あのデカい剣がバラけてビットになるんだな」「ビットがモビルスーツ本体にくっついて、攻撃と防御を同時にやることもあるんだな」と理解できるようになっている。

 そんなガンダムに対して、グエルが劇中で一番最初に乗っていた機体であるディランザで立ち向かうという構図は、なかなかに熱いものがある。機体も武器も一方的に破壊されつつ、最後に兄としての責任を果たそうとする戦い方も、ディランザとシュバルゼッテの強烈な戦力差を考えれば当然であるように思う。

 強烈な兄弟喧嘩に割り込み、ガンダム史に残る偉業を成し遂げたのがフェルシーである。心情的にすれ違ってしまったパイロット同士がガチガチに戦うという展開は、ガンダムシリーズではよくある。そこに割り込んで、なんかべちょべちょした弾で機体の爆発を抑え込んだフェルシー。確かに今までのガンダムで初めて見るタイプの映像である。あのべちょべちょした弾が宇宙世紀にも普及していれば……。

 こういったハイレベルなモビルスーツ戦も見どころだったが、今回はもうひとつ、クワイエット・ゼロ内での銃撃戦も凄まじかった。特にミオリネ、エラン5号、ベルメリア対プロスペラおよび武装ハロの撃ち合いである。ここは低重力であるクワイエット・ゼロの環境を生かしたアクションシーンになっていた。

 まず、フワフワと空中を跳ねながら、ミオリネたちに近づいてくるプロスペラが恐ろしい。実際に重力が弱いんだから当たり前ではあるが、体重を感じさせないステップはマジで魔女のようである。

 これに続き、飛んでいった拳銃を片手で確保しながら、縦に回転しつつ反撃するエラン5号の動きもすさまじい。わずか数秒のシーンだが、縦に回転した胴体の動きを片手で捕まった壁面を使って止めつつ、慣性で脚だけはぶら~んと動き続けるという複雑なアクションを表現しており、上下が逆さまになった銃撃である点も相まって、「低重力下の銃撃戦」というこのシーンの面白さが凝縮されている。

 その後壁の裏側に回り込んで敵弾をかわしつつ、ミオリネを急かすエラン5号の動きもすごい。コマ送りで見るとわかるのだが、ミオリネに声をかけつつ敵弾が当たって生じる火花に対してしっかり顔をしかめており、この数秒間の演技の細かさには驚くばかりである。エラン5号の長めの髪も低重力下ならではのなびき方をしており、さぞかし名のあるアニメーターさんが担当したのだろう……と思わせるものがあった。

 この銃撃戦に関して言えば、銃から薬莢が飛んでいないのが気になった。銃撃戦の前にプロスペラが拳銃のスライドを引いて弾を装填するシーンを入れているあたり、『水星の魔女』のスタッフは拳銃にはどう弾が入っており、どう排莢されるかはちゃんと知っている。ということは、思うに無重力下で使うことが前提の銃器類は、この時代はケースレス(発砲に際して薬莢を使用しない仕組みの銃)なのが前提なのだろう。重力がない場所で撃ち合っている時に、空中をフワフワと薬莢が飛んだら邪魔で仕方がないはずだ。

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