『ガンダム 水星の魔女』は残り5話でどう物語を畳むのか……アーシアンとスペーシアンの厳しい対立を考える

 プロスペラの手により、とうとうスペーシアンとアーシアンの間で壊滅的な戦闘になってしまった第19話。物事がちょっとうまくいきそうになったところでひっくり返されるという、『水星の魔女』の展開が炸裂している。

 アーシアンとの協議の場に臨むべく、地球へ向かったミオリネとグエル。一方で2人に非武装の護衛として同行するプロスペラには、「宇宙議会連合が接収したオックス・アース社によって開発が進められ、フォルドの夜明けがテロに利用したガンダムを破壊する」という目的があった。あくまでアーシアンとの対話を重視しようとするミオリネ、そしてそんなことは関係なしに自らの復讐を進めようとするプロスペラ。今回は、その目的の違いが大きな悲劇を生んだ。

 それにしても、プロスペラの計画はけっこう杜撰というか、「これ本当に復讐する気だったのか……?」と疑問に思ってしまうくらい行き当たりばったりである。フォルドの夜明けが所有するガンダムの隠し場所がわかったのもどうやら地球へ向かう途中のことだし、そもそも「宇宙空間でスレッタをエアリアルから放り出させて自分が乗る」というのも段取りとしてはけっこう危ういと思う。後者に関しては、それだけエリクトとプロスペラの信頼関係が強いということなのかもしれないが……。

 すごくいいタイミングでケナンジ隊長とグエルがアスティカシアに戻ってしまったのも、行き当たりばったりと言われても仕方ないだろう。護衛を仕切るドミニコス隊の隊長がいないタイミングで地球側から攻撃を喰らえば、現場が混乱するに決まっている。あらゆる物事のタイミングがプロスペラにとって最高だったからこそ、彼女の復讐は(今の所は)うまくいったのだと思う。

 そんなプロスペラにとっても予想外であろうポイントが、地球寮のメンバーによってスレッタが意外に早く立ち直っちゃいそうなことである。前回自分は「誰からもまともに説明してもらえてないし、スレッタはもっと怒っていい!」と思いながら見ていたのだが、落ち込んだ後の盗み食い→地球寮メンバーとの会話によってけっこう素早くメンタルの調子が戻っていった。そして今回のラストではエリクトが選んだ「一番じゃないやり方」の真意に気付くのである。怒るんじゃなくてそっちにいったのか。本当にいい奴だな、スレッタは……。

 ミオリネは地球に取り残されたまま、学園にはシャディクの陰謀に気づいたグエルとケナンジが乗り込んでくるという波乱の状況で、スレッタがこのままぼんやりしているだけということはないだろう。何週間も似たような状況が続いていたグラスレー寮の軟禁部屋も来週には動きがあるだろうし、この後が気になるところだ。

 今回、もうひとつ頭に残ったのが、スペーシアンとアーシアンとの圧倒的な格差、そしてスペーシアンの所業のえげつなさである。プロスペラがターゲットにしていたフォルドの夜明けのガンダムは、元々スペーシアンの支配体制である宇宙議会連合とスペーシアンの企業であるオックス・アースが開発・提供したものだ。フォルドの夜明けはそれを与えられてテロに使っていたわけだが、テロは必ずスペーシアン側の報復を招き、結果的に地球への搾取を強めることになってしまっている。

 よくもまあ、こんなにエグい設定を考えついたものだな……という感じである。圧倒的な軍事力の差を背景にアーシアンのテロ行為を煽り、戦争シェアリングで兵器を売り払い、自分達は安全な宇宙から地球を搾取し続ける……そんな状況下でアーシアン側の代表が会談を持とうとしただけでも、けっこうビックリではないか。ミオリネの提案に対して「なんでもいいからまずお前らは地球から出ていって、二度と自分達に関わるな」という反応だったのは当たり前だと思う。

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