『ガンダム 水星の魔女』スレッタにはキレる権利がある! “本気の怒り”をぶつけてほしい理由

 一週間の中断を挟んで再開された『水星の魔女』。第18話では、とうとうスレッタの正体(の一部)が明かされることになった。

 総裁選に向けてバチバチに戦い始めたシャディクのグラスレー社&ペイル社陣営対、ミオリネの株式会社ガンダム&グエルのジェターク社陣営。事業譲渡と反対陣営の切り崩しを着々と進めるシャディクに対し、ミオリネはアーシアンの武装勢力との対話という離れ業で、自陣営の実績を積もうとする。

 一方、ミオリネからは不必要と言い放たれ、家族同然だったエアリアルも奪われたスレッタは、表向きは快活に日常生活を送る。しかし、心の底ではミオリネに対する思いを溜め込んでいたことをチュチュに見透かされており、彼女の説得で地球に向かおうとするミオリネに気持ちを伝えにいくことに。

 そこで明かされたスレッタの正体というのが、今回最もパンチのあったポイントだろう。スレッタはエアリアルをスコア8まで持っていくための「鍵」となる存在であり、エリクトを元に作られた「リプリチャイルド」だったのである。まあ、多分そういう感じの話なんだろうなあ……とは思っていたけど、改めて聞かされるとハードである。

 つまり、スレッタのこれまでの人生は、あくまでエアリアルのためにあるものだったということになる。母親に洗脳された上で放り出され、家族同然だと思っていたモビルスーツ(の中身)からは「自分が思い通りに動くための鍵だった」と言われ、婚約者だったはずのミオリネからは用済み扱い。特にエアリアルによるデータストームでスレッタが苦しめられるシーンはキツかった。今まで家族同然の大事な存在だと思っていたのはスレッタだけで、エアリアル=エリクトからすれば、自分の一存でいつでも追い出せたのである。そしてプロスペラからも突き放され、一人で宇宙に放り出されるハメに。そんなことって……。

 ただ、プロスペラとエリクトからすれば、今後ハードになるであろう復讐の旅路にスレッタを連れて行かないための選択だったという点も、劇中では触れられていた。プロスペラは「連れて行ってもいい」と言ってはいたが、エリクトに諭される形でスレッタを自由に生かすことを選ぶ。

 スレッタとエリクトの見た目は瓜二つだし、もしエリクトが17歳になればきっと今のスレッタのような姿になっていたはずだ。そんな存在に対して、母親として多少なりとも情が湧かないとは考えにくい。自分としては、「ここでスレッタを放り出したのは、プロスペラとエリクトの優しさだった」ということだと思う。

 しかし、しかしである。今週までの流れを見て「頼むから登場人物全員ちゃんとコミュニケーションをとってくれ!」とも思うのだ。

 大体エリクトもさあ! 基本的にはスレッタのためを思って、「もう自由に動けるから自分達の復讐からは切り離そう」と思っているわけでしょうが! だったらその旨を丁寧に説明して、だからお前はこのモビルスーツから離れる必要があるんだと説得すれば、もうちょいなんとかなったのではないか。

 プロスペラにしても同じである。己の復讐に邁進する黒幕で、スレッタのことなんかゲームのコマ程度にしか思ってないようにしか見えなかったプロスペラだが、プロスペラなりにスレッタに対する愛着があったことは、今回のラストシーン付近を見れば読み取れる。だったらさあ! もうちょい綺麗にエアリアルと切り離せるように下準備しとくとか、今後の流れや自分の目的についてそれとなく説明しておくとか、あったじゃん! いきなり宇宙をカッ飛んできて、急に「学園に戻りなさい」「あそこならあなたの胸を埋めてくれる」って、説明不足にも程があるでしょ!! 

 前回のミオリネをはじめ、これだけ説明不足の投げっぱなしの連打を喰らわされているのを見せられると、さすがにスレッタが気の毒である。そんなスレッタは依存する相手全てから切り離されて、次回からようやく自分の人生を生きることが可能になった。生まれ直しみたいなものである。それならば、個人的には独りよがりで説明不足なミオリネやプロスペラやエリクトに対して本気の怒りをぶつけてほしいと思う。これだけ具体的なことを説明されずに全てから捨てられたスレッタには、キレる権利があると思うのだ。君は怒っていい! 怒るべきだ!!

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