『アンデットアンラック』異能バトル漫画としての斬新さは「RPG的設定」にアリ
最終戦争(ラグナロク)の到来したことで姿を現した神・サンによって否定者たちは次々と命を落とし、世界は滅亡する。
しかし風子は、古代遺物・方舟(アーク)の力を用いて新しく誕生した地球へとループする。実はこれまでいた世界は100回目の世界で、世界は神によって何度も滅ぼされており、その度にユニオンのリーダーのジュイスは、時間をループしていたのだ。方舟の力でループできるのは今回が最後だったが、ジュイスから新しいユニオンのリーダーに任命された風子は、101回目のループに挑むこととなった。
『アンデラ』のアイデアの豊富さと切り口の斬新さには、毎話驚かされてきたが今回の驚きは別格である。ループというアイデア自体は手垢のついたものだが、一から物語をやり直すことで、今まで登場したキャラクターや設定を材料にして違う物語を再構築してしまう「セルフ二次創作」が展開されるとは、思いも寄らなかった。
何より感心したのが、RPGにおける周回プレイの楽しさを、漫画の中で再現していることだ。近年のRPGの多くはマルチエンディングが採用されており、一度クリアしたゲームを二周、三周と遊ぶことが当たり前となっている。その際にプレイヤーは一周目では選ばなかった選択肢を選び、違うキャラクターを仲間に加え、一周目では獲得できなかったアイテムを入手する。また、データを引き継いだ状態でプレイすることもできるため、ゲームクリア時のレベルでスタートすることもできる。何より事前に何が起きているかを知っているので、楽勝でゲームをプレイできる無双状態を楽しむことができる。
二周目の風子はまさに無双状態で、一周目で仲間の否定者が経験した悲劇を回避することで、仲間に加え、彼らが抱えている問題を超スピードで解決していく。この風子と、一周目では敵対していた否定者たちが力を合わせることができれば、絶大な力を持つ神でも倒せるのではないかと、期待してしまう。
何より嬉しいのが、一周目では序盤でアンディと風子と戦い命を落としたジーナが仲間に加わり、特殊なスーツを身にまとってアンディに戦いを挑み、素顔も描かれずにあっさりと命を落としたボイドが再登場すること。
『アンデラ』は展開が早いので、登場人物があっさりと退場していく。その思い切りの良さを面白がりつつも「もったいない」と毎回思っていたので、退場したキャラクターが再登場して、風子の仲間に加わる展開が続くのは、ファンとしては嬉しい限りである。