『アンデットアンラック』異能バトル漫画としての斬新さは「RPG的設定」にアリ

『アンデラ』の斬新さに迫る

 『アンデットアンラック』(集英社、以下『アンデラ』)の第16巻が発売された。戸塚慶文が週刊少年ジャンプで連載している本作は、否定能力と呼ばれる世界の理(ルール)を否定する力を持つが故に、理不尽な運命に翻弄されてきた否定者たちが、神に戦いを挑むSF異能バトル漫画だ。

 物語は出雲風子とアンディが東京駅で出会う場面から始まる。肌に直接触れた者に対して不幸が押し寄せる不運(アンラック)の力を持つ風子はその力のせいで両親を失い、他人と関われない生活を送っていた。人生に絶望した風子は飛び降り自殺を図ろうとしていたが、そこに不死(アンデッド)の力を持つアンディが現れ、風子の自殺を妨害する。

 その後、風子とアンディは共に行動することになるが、やがて否定者として対未確認現象統制組織・ユニオンの円卓メンバーに加入し、神からの課題(クエスト)に挑戦することとなる。

 本作は、荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)第3部のスタンドバトル以降、現在の少年ジャンプで主流となっている特殊な力と力がぶつかり合う異能力バトル漫画だ。風子たちは否定能力と呼ばれる不思議な力を持っており、その力を駆使して敵対する否定者やUMAと呼ばれる怪物と戦うことになる。

 否定能力の一つひとつは決して目新しいアイデアではないのだが、どれも見せ方が斬新で、意外な切り口によってバトルが描かれている。同時に物語の展開がとても早い。現在16巻だが、他のジャンプ漫画なら30巻分くらいの密度の物語が圧縮されており、とにかくテンポが良い。

 何より読んでいて驚かされるのが、細かく練られた設定だ。否定者たちは神が繰り出す課題に挑みクリアすることで、他の否定者の居場所や古代遺物(アーティファクト)と呼ばれる特殊なアイテムを獲得することができる。つまり風子たちは、RPG(ロールプレイングゲーム)をプレイする感覚で次々と課題に挑み、クリアする事にレベルアップして強くなっていく。

 しかし敵は世界の理を支配する神なので、勝ち目は皆無に等しい。敵が強ければ強いほど、バトル漫画は面白くなるものだが、『アンデラ』の場合は神という、途方にくれるほど絶大な存在であるため、どうやって終わらせるのか、皆目検討がつかなかった。だが、前巻の15巻で、あっと驚く超展開を見せたことで、今までの物語を踏まえた上で、まったく違うステージへと突入した。

※次ページ以降、ネタバレあり

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