人気漫画家・あらゐけいいち、音楽教科書のイラスト担当決定 画一的な紙面づくりからの脱却の契機に?
京都アニメーションによってアニメ化もされた漫画『日常』などで知られる漫画家・あらゐけいいちが、令和6年度版小学校音楽の教科書『小学生の音楽』(教育芸術社)で、表紙と本文に登場するキャラクターのイラストを担当することになった。
Twitterでは話題が沸騰。「かわいい」「もう一度学校に入り直したい」「今の小学生が羨ましい」などの意見が寄せられている。教科書の紹介映像がUPされているが、その中に『日常』に登場するキャラクター・東雲なのを思わせる“なの”というキャラクターが登場し、ファンにはたまらない内容になっている。
記者が小学生の頃は、教科書に『サザエさん』の絵が出ているだけで「おおっ」と思うほど、基本的に真面目なイメージだった。その後、教科書は堅苦しいイメージからかなり脱却が進み、特に英語の教科書などは「キャラクターの絵がかわいい」としてSNS上で話題になることもあった。
ところで、「教科書に漫画を載せたい」と強いこだわりを持った漫画家がいる。巨匠・矢口高雄である。矢口は文才も長けており、エッセイ集の『ボクの学校は山と川』『ボクの先生は山と川』に収録された文章が道徳の教科書に収録され、イラストと漫画も合わせて採用されることになった。このとき、矢口は「『害虫』と批判された漫画が教科書に載る。『やったぜ』と思ったね」と振り返っている(話の肖像画 漫画家・矢口高雄(4)/産経新聞社2017年12月28日配信より)。
その後、矢口のエッセイは教科書にたびたび採用されている。矢口は漫画が社会に受け入れられるための活動にも熱心であり、故郷の秋田県横手市では漫画の原画を収蔵・展示する「横手市増田まんが美術館」の設立に尽力した。Twitterではその画力の高さがたびたびバズる矢口だが、漫画家の活動の幅を広げた人物としても高く評価されるべきであろう。
漫画がこれまでに採用されていなかったジャンルに使われたときは大きなニュースになる。フランスの高級ブランド「エルメス」の社史を竹宮惠子が漫画で描いたり、日本の公式の郵便切手に手塚治虫とそのキャラクターが起用されたときも話題になった。
あらゐけいいちのかわいらしいキャラクターは、音楽の楽しい雰囲気をよく表現しており、教科書の雰囲気にぴったりといえる。現在、教科書業界は寡占が進み、検定を意識してか無難で単調な作りになっているという指摘もある。今後も作り手目線ではなく、今回のような生徒目線を意識して試行錯誤を重ね、意欲的な教科書の登場を期待したい。