『ぼっち・ざ・ろっく!』と『チェンソーマン』平成・令和の音楽対決? 世代を分けた「楽曲」へのこだわり

『ぼざろ』と『チェンソーマン』

 最近のアニメシーンを盛り上げた作品といえば、多くの人が『ぼっち・ざ・ろっく!』と『チェンソーマン』を思い浮かべるだろう。片や少女たちの青春を描いたバンドアニメ、片やダークな世界観のバトルアニメと、作品の方向性は真逆だったが、実はそこには“音楽のこだわり”という共通点があった。

 まず『ぼっち・ざ・ろっく!』は、極度の人見知り少女・後藤ひとりが「結束バンド」というバンドを組み、友情を育みながら成長していく物語。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーを元ネタとしたキャラクター名からも分かるように、“あの頃”の邦楽ロックを強く意識した作品だ。

 そうした原作の設定に加えて、アニメ化にあたってコンセプトがさらに明確となった。主題歌の作詞・作曲には、KANA-BOONの谷口鮪やthe peggiesの北澤ゆうほといったロックアーティストたちの名前が並んでおり、“下北沢を舞台としたバンドもの”という設定に命を吹き込んでいる。

 さらに最終回のエンディングとして、「転がる岩、君に朝が降る」のカバーが使用されたことも話題を呼んだ。この曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONが初の海外公演として、韓国のフェスに参加した際に生まれた楽曲。原作者・はまじあきのツイートによると、「ぼっちちゃんの事をを考えた時にこの曲しかない!と思い選ばせて頂きました」(原文ママ)とのことで、邦楽ロックへの深い思い入れが示唆されていた。

 アニメを通して令和によみがえった邦楽ロックの力は、多くの人の心を動かすことに。 『ぼっち・ざ・ろっく!』が平成を代表するバンドアニメ『けいおん!』に比肩する作品となったのは、間違いなく“音楽の力”が影響しているはずだ。

 そして同じく昨年10月にスタートしたアニメ『チェンソーマン』も、音楽によって人の心を動かした作品だった。

 OP主題歌としては、米津玄師の『KICK BACK』を使用。ED主題歌は毎週変わり、そのラインナップにはano、Eve、Aimer、女王蜂、PEOPLE 1、Vaundy、TOOBOEなど、今の音楽シーンを代表するアーティストが名を連ねていた。たんなる話題性だけでなく、各アーティストが『チェンソーマン』と向き合った楽曲作りを行っていたことも、特筆すべきポイントだろう。

 かくして音楽面に力を入れていた『ぼっち・ざ・ろっく!』と『チェンソーマン』だが、両作品に大きな違いが存在することも否定できない。前者は邦楽ロック直撃世代、後者はTikTokユーザーと、全く別の層を夢中にさせていたからだ。

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