『ぼっち・ざ・ろっく!』の良心? 結束バンドメンバーを導く大人キャラ4選

『ぼざろ』キャラ解説

 バンド活動を通して、少女たちが仲間と共に成長していく様子を描いた青春音楽漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』。学生バンドを描いていることからも分かる通り、主人公・後藤ひとり(ぼっちちゃん)を含めたバンドメンバーはもちろん高校生しかいない。しかし本作には、成人したキャラクターも数多く登場しており、その誰もがメインメンバーたちにとって必要不可欠な存在ばかりだ。

 今回は「結束バンド」メンバーを導いていく、大人キャラクターを4人紹介したい。なお、原作1巻から4巻までの内容になるので、ネタバレには十分注意して読んでほしい。

伊地知星歌

 主人公たちが結成したバンド「結束バンド」のリーダーを務める伊地知虹夏の姉が伊地知星歌だ。連載当初は29歳だったが、作中で30歳の誕生日を迎えている。

 元バンドマンで、その実力はレーベルからスカウトを受けるほど。現在は主人公達のバイト先、ライブハウス「STARRY」の店長として店を切り盛りしている。

 妹の虹夏から「STARRY」のライブに出演させてほしいと打診された際に、星歌は「出す気ないけど」ときっぱりと断るシーンがある。本来はデモCD審査などのオーディションを経てやっと出演できるぐらいには実力が求められるライブなのだが、身内だからといって依怙贔屓をせずに突き放すのだ。

 しかし星歌の計らいで、「結束バンド」が出演してもいいように実は一枠だけ空けていたことが判明する。獅子は我が子を千尋の谷に落とすではないが、真剣にバンドのことを考えているからこその優しさだったことが語られる。

 ひとりたちにとっては気難しい存在でもあるが、彼女がいなければ「結束バンド」は、ただの学生バンドのまま終わっていた可能性も大いにある。星歌なくして、『ぼっち・ざ・ろっく!』は語れないだろう。

廣井きくり

 自由奔放な性格だが、ベースの腕前はかなりのもの。大のお酒好きで、四六時中酔っ払っているシーンが描写されている。

 そんな彼女と主人公の出会いは、きくりが酔い潰れて行き倒れていたところを、ひとりが助けてあげるところからスタートする。この時ひとりは、自身のライブチケットが売れず困っていたタイミング。介護してくれた恩を返すため、きくりは一緒に路上ライブをしてチケットを捌き切ろうと提案を持ち掛けてあげるのだ。

 しかし、ただでさえ人前が苦手なひとりは路上ライブには消極的。その姿を見てか、きくりは「敵を見誤るなよ」と意味深な言葉をかけ路上ライブはスタートしてしまうのだが、これがキッカケで、ひとりは自分が勝手に敵を作って実力を発揮しきれなかったことに気付くエピソードがある。

 実はきくりも、ひとりと同じ“陰キャ”だったことが作中で語られている。そんな過去もあったからなのか、きくりはひとりが抱えている問題を即座に見抜き、自分で問題を解決するように促すのだ。後のエピソードでも、まるで師弟関係のような形で、ひとり達「結束バンド」の成長に一役買っている。

ぽいずん♡やみ(佐藤愛子)

 フリーライターとしてバンド批評サイトで執筆活動をしている23歳(本人曰く外見年齢は14歳)。

 彼女を知るにはまず、ひとりのことを改めておさらいしておきたい。ひとりは、演奏した動画をネットにアップして人気を集める「ギターヒーロー」の名義でも活動しており、その素性は秘密。作品開始当初は、虹夏以外は知らなかった。

 そんなひとりのステージを観たぽいずん♡やみは、彼女が「ギターヒーロー」であることを看破。その演奏に惚れ込み、自分の人脈を使ってひとりがメジャーデビューできるように計らうと約束するのだが、あくまでひとりだけをメジャーデビューさせたいのであって、「結束バンド」はその範疇の外であることを告げる。さらに追い打ちをかけるように「“ガチ”じゃないですよね」と、メンバーに向けて「結束バンド」が本気でプロを目指していないと辛口な評価も下す。

 メンバー達はこの事を深刻に捉え、実力を証明するため「未確認ライオット」という10代限定のフェスティバルに挑戦。その経験を通して「結束バンド」は成長を遂げる――という展開になる。後にぽいずん♡やみは、ひとりの才能にみんなが萎縮してしまうのではないか。と考えての発言だったと口にするのだが、現実的にバンドとしてステップアップするため、向き合うべきことを告げた彼女の功績は大きいはず。伝え方には棘があったが、ある意味、嫌われ役を買って出た存在と言っても過言ではない。

モッシュ先導男

 「未確認ライオット」ファイナルステージに足を運んだ、ひとりと「結束バンド」メンバーの山田リョウの前に表れた男。言わずもがなインドア派のふたりにとって、暑い日差しが注ぎ、ヒートアップした観客がひしめくフェスは地獄そのもの。なかでも、観客同士で身体をぶつけ合うモッシュは天敵で、それを仕切っていたのがモッシュ先導男である。

 ひとしきりライブを観てボロボロになったひとりとリョウは、水分補給をしようとするも携帯も水もないことに気付く。最早、幻覚が見え始め、死の淵をさまよっていたふたりの前に再び現れたモッシュ先導男は、買ったばかりの水をほ施したり、救護施設を案内しようとしたりと彼女たちを心配して救助してあげるのだ。

 まるでスーパーヒーローのように駆けつけた彼は去り際もカッコよく、お金を出そうとしたひとりに対して「いーっすよ!」と軽く断ってみせるのだから乙である。そんな彼のおかげで、フェス自体を後ろ向きに捉えていたひとりとリョウが「フェス案外悪くない」「陽キャ最高!」とポジティブに考え直すぐらいには、彼の登場は非常に意味があったものだと考えられる。

 時には厳しく、ある時はそっと後ろから見守ってくれる大人達。彼女達を導いていく素敵な描かれ方がされているので、ぜひ『ぼっち・ざ・ろっく!』を読んで確認してみてほしい。

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