『ゲームの歴史』販売中止へ 膨大な資料集めと見識を要する「通史」執筆の難しさ
ゲームの通史は誰かが書かなければいけない本だ
『ゲームの歴史』という企画自体は素晴らしいだけに、絶版本、回収本の“歴史”に名を残してしまったことが残念でならない。
インベーダーゲームやファミコンが発売されてから、何十年という時間が過ぎ去っている。ゲーム業界には既に60歳を超えたクリエイターが多く、人気のあるクリエイターほど多忙だった時期の記憶が薄れていることが少なくない。ゲームの正確な歴史を後世に伝えるためには今がラストチャンスであり、『ゲームの歴史』は編集チームを結成してでも作成する価値のある本である。
できれば早急に、誰かがゼロベースで『ゲームの歴史』を執筆して世に出すべきではないか。現在の騒動を忘れた20年後、50年後の人が、本書を参考に論文などを書いてしまう恐れがあるためだ。『ゲームの歴史』の内容をもとにした歴史が、100年後、200年後に定説化してしまったら、どうなるだろうか。
通史は、後世の研究者に参考にされることが多い。それほど重い仕事なのである。本書の後、誰もゲームの通史を執筆しないままになることが一番危険であろう。
日本のゲームは世界に誇る文化である。これほど広がりを持った文化を後世に伝えることが絶対に必要であることは、論を俟たない。繰り返すようだが、ゲーム業界のキーパーソンの多くが存命である今こそ、丹念な資料集めとインタビューを行ったうえで記録を残すべきだ。記者はゲームに関してはニワカなので難しいが、ゲームを愛し、精通するライターや研究者が今こそチャレンジしてほしい。後世の人々から感謝される、歴史に残る本になるのは間違いない。