『幽白』蔵馬、『スラダン』藤真、『進撃』ベルトルト……“平成の漫画少女”たちが愛したキャラクター3選
言葉のとおりとらえれば少年漫画は男の子の読むもの、少女漫画は女の子の読むものなのだが、少年漫画・青年漫画は男性読者だけを対象にしているのではなく、女性たちも楽しめるものという考えが一般化した。
今も新発売の漫画ランキングには必ず少年漫画・青年漫画がランクインしている。女性が男性向け漫画を堪能する理由はさまざまだが、そのひとつは少女漫画の魅力的な男性キャラとはひと味違う登場人物の個性に惹かれるからだろう。
この記事では人気のある少年漫画の男性キャラを三人あげて、彼らのどのような点が少女たちを魅了したのか論じたい。彼らが登場するのは『幽☆遊☆白書』(冨樫義博/集英社)、『SLAM DUNK』(井上雄彦/集英社)、『進撃の巨人』(諫山創/講談社)である。
蔵馬(幽☆遊☆白書)
1990年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)は黄金期を迎えていた。『ドラゴンボール』(鳥山明)『SLAM DUNK』(井上雄彦)、『るろうに剣心』(和月伸宏)とヒット作を数えればきりがなく、どのページをめくってもかならずおもしろい漫画に出会えた時代である。
その中の代表格のひとつが『幽☆遊☆白書』(略称:幽白)だ。幽白はバトル漫画として読みごたえがあるだけではなく、登場人物の個性も際立っていた。
人気投票で毎回1位にランクインしていた飛影の見た目は釣り目で小柄、中身はツンデレということからもそれは表れている。飛影は男女共に人気のある登場人物だった。女性の人気だけなら、もしかしたら飛影を超していたかもしれないと言われていたのが毎回人気投票2位だった蔵馬である。
女性に間違われるほど中性的な外見の蔵馬は、もともとは魔界で恐れられていた妖怪である。人間界でまだ生まれていない胎児に憑依して人間となり、今の姿になった。長い髪は蔵馬の容姿に合うように描写され、バラを武器に巧妙な戦闘術で敵を倒す。性格は心やさしいが、人の命をぞんざいに扱う敵には容赦しない残酷さも併せ持つ。
蔵馬はピンチになると元の妖怪の姿、妖狐(ようこ)蔵馬に戻り、より高い戦闘能力を見せる。人間の蔵馬より大人っぽく妖しい魅力を放つ妖狐の姿も人気があり、蔵馬が好きだと言うと今も「人間のほう? 妖怪のほう?」と聞かれることが多い。
少女漫画を含めた数えきれないほどの漫画全体を見ても、蔵馬は女性人気の高い男性キャラとして殿堂入りをしているだろう。
藤真健司(SLAM DUNK)
ここからは登場回数の少ない人物を挙げてみたい。藤真健司はバスケットボール漫画『SLAM DUNK』の対翔陽高校で登場したキャラであり、「翔陽の貴公子」と呼ばれていて作中でも本作きってのイケメンであることが強調されている。
監督のいない翔陽高校で司令の役割を担いつつ、チームがピンチになればコートに入りその流れを断ち切るエースでもある。1年生から強豪の翔陽高校のスタメンで、作中では触れられていないが中学生時代もかなりの活躍を見せていただろう。
彼が女性人気を得た理由は容姿だけではない。「もし、翔陽に監督がいたらどうなっていたか」という作中の言葉にも表れているとおり、彼はプレイヤーでありながら監督のような役割も果たさなければならず、バスケットボールのプレイに集中できなかったのは選手として大きな痛手であっただろう。
ギャップのある人はフィクションでも現実でも魅力的だが、藤真もそうだ。コートの外と中で性格が異なって見える。ふだんは冷静なのに、チームが劣勢になって試合に加わると、一瞬にして決してあきらめない熱い男になるのだ。そこに結局は敗北を期してしまうという悲劇性も重なる。
敗北したあと、整列して涙を流す藤真の姿は忘れられない。