『幽白』桑原と『H×H』レオリオはなぜカッコいい? 共通点と相違点からその魅力を考察

『幽白』桑原と『H×H』レオリオのカッコよさ

 少年漫画には、時として女性読者に好かれにくく、しかし魅力的な男性キャラが登場する。根性や努力で、ある意味で泥くさく物事を成し遂げるが、見た目が必ずしも美しく描かれていないキャラがそれに該当する。少年たちは彼らの魅力をすぐに見抜くのだが、少女たちは自らが現実で恋愛をするようになってから気づくように思う。

「あれほどかっこいい性格の人って、実際はなかなかいないなあ」

 下心なく行動し、友情に篤い。なにげない行動や言葉が、人に勇気を与える。そうだ、『幽☆遊☆白書』(以下「幽白」)の桑原や、『HUNTER×HUNTER』(以下「H×H」)レオリオのような……。

 同じ冨樫義博さんの作品であるが、桑原とレオリオは四人のメインキャラのなかでは、いつも相対的に人気がなかった。だが桑原やレオリオに票を入れた人は、若くして、または幼くして彼らの人間味あふれる魅力に気づいた逸材とも言える。本稿では、そんな桑原とレオリオについて考察をしたい。

 『幽白』の桑原和真は、80年代から90年代前半まで、おそらく日本のどこにでもいたような「ヤンキー」として登場。主人公の幽助をライバル視しながらも、作中で徐々に幽助と篤い友情で結ばれていく。ヤンキーなのに、内面はあたたかい。映画版(大長編)『ドラえもん』のやさしさもあるジャイアンをたくましくして長身の高校生にすれば、こんな性格になるのではないだろうかとさえ思える。

 「幽白」のメインキャラクターは幽助、桑原、蔵馬、飛影の四人で、その中で唯一、妖怪の要素がない生身の人間であり、彼が戦って傷を負うたびに、私たちはその痛みを現実的なものとして想像させられた。

 一方で「H×H」のメインキャラクター四人は、物語冒頭のハンター試験で出会う。主人公のゴンのほか、キルア、クラピカ、レオリオ。桑原と同様に、レオリオはメインキャラの中で最初はもっとも弱いが、情が深く根性がある。一見ぶっきらぼうで露悪的だが、命懸けでハンター試験に臨み、並々ならぬ強い意志を感じるレオリオには、当初から「この人、最後まで生き残りそう……」と思わされる何かがあった。

 幽助が妖怪たちと戦わなければならないなか、唯一人間として接してくれる桑原。そして、同胞を皆殺しにされた復讐のためにハンターを目指し、孤独になりがちなクラピカと行動を共にするレオリオ。代表的な共通点を例として挙げるなら、彼らの人情味にあふれる性格だ。

 桑原は、氷女の妖怪・雪菜が捕らわれ酷い目に遭っていると知ったとき、激昂しふだん以上の力を出す。そして彼女を救ったあと、「人間全部を嫌いにならないでくれ」と謝るのだ。助けた側が謝るのは普通であれば考えられないのだが、雪菜を酷い目に遭わせたのが自分と同じ人間だったことから、彼は誠実にも、罪悪感をいだいたのである。

 一方でレオリオは、物語の序盤、ハンター試験の会場に向かう最中、老婆(試験官)から「お前の母親と恋人が悪党につかまり一人しか助けられない。どちらを助ける?」という質問を投げかけられ、このような答えのない問題の「正解」をハンター協会が決め、人を値踏みするのかと、怒りを露わにする。その憤りは試験を棒に振ることを厭わないほど強く、そんなレオリオは最終的に老婆から「お前みたいな奴に会いたくてやってる仕事さ」と声をかけられるのだった。

 彼は「お金を稼ぎたい」という理由でハンターになりたいと周囲には言うが、実はそれには深い事情がある。その事情を読者が知ったとたん、レオリオの人間味は増す。後に彼は、漢気ある行動でハンター協会の次期会長候補に祭り上げられるほど、周囲を巻き込んで存在感を高めている。

 また彼らは、どちらも強がりだが、ただ強がりなだけではなく、危機に瀕したときはいわゆる「馬鹿力」で乗り切ることができる。妖怪である飛影、暗殺者として幼少期から英才教育を受けているキルアなどと比べると圧倒的に不利な状況であっても、七転八倒しながら乗り切る姿は、読者に勇気を与えてくれる。

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