乃木坂46・鈴木絢音の“辞書愛”が詰まった対談集 卒業目前「言葉」をめぐって自身の活動を振り返る

乃木坂46・鈴木絢音が語る“辞書愛”

辞書から教えてもらったこと


――鈴木さんの普段のお仕事でも、楽曲の歌詞やお芝居の台詞など、ご自身が発するための言葉を読み込んでいく際に、ちょっとした表現などを辞書で調べることは多いのでしょうか?

鈴木:お芝居はそんなにないですね。それはたぶん、お芝居は私以外の人間が生きるっていうことだからだと思っていて。アイドルとして歌詞で気になった部分があったり、この感情を表現するのにこの言葉で合っているのかなとか、そういうことが気になるときには、辞書で引いたりはします。

――歌詞や台詞として発する表現に違和感を覚えたり、言葉の使い方が気になったりということもありますか?

鈴木:多いかもしれないですね。普通に生活しているだけでも、“はてな”がいっぱい出てくるくらいなので。本当にこの言葉遣いをするのかなとか、気になることはありますね。

――それをご自身の表現としてアウトプットする際には、どうやって消化していくんでしょう?

鈴木:なんだろうな、そこに書かれている人物に近い人を探すというか、現実ではどうなんだろうと調べたり、ですかね。うーん、やっぱり調べることで消化している気がします。

――職業柄、ブログやメッセージアプリなどを含め、鈴木さん自身の言葉を発信する機会も多いですよね。お芝居のような虚構の誰かの言葉ではなく、ご自身の言葉を綴るときに感じる難しさはありますか?

鈴木:自分の伝えたいことに合う言葉が見つからないときが、一番つらくてもどかしいですね。その言葉を探すために、分厚い類語辞典を出してきて引いたりすることは多いです。似ている言葉から探していこうみたいな感じで。

――こんな感じの意味なんだけど少しニュアンスが違う、みたいなことはありますよね。

鈴木:そう、そうなんですよ。ちょっと違うだけで、印象がかなり変わったりするじゃないですか。

――では、歌詞や台詞を表現するときよりも自分の言葉を発するときの方が、辞書は身近ですか?

鈴木:そんな気がします。歌詞やお芝居の言葉はもうその人の世界、その人の正しさだと思うので。ただ、自分から発する言葉は、やっぱり自分が責任を持たなきゃいけない意識がより強くなるので、辞書を調べることは多いですね。

――単語レベルだけでなく、トータルでの文章の書き方や文体に関してはいかがでしょう。憧れる文章とご自身が自然に綴る文章との間にギャップを感じることは?

鈴木:ありますね。どうして私は、こんな小難しい感じで書いちゃうんだろうと思うことはよくあって。もっと親しみやすいというか、いかにもアイドルらしいブログだったりとかが書きたいはずなのに。ちょっとひねりを加えちゃうのは、これまで読んできた作品などからも影響を受けているなと思います。

――本当はこういう文章が書きたい、というときの具体的な方向性はどのようなものでしょう?

鈴木:うーん、端的に言うとですけれど、わかりやすくて伝わり方が一緒で、誰でも同じような理解ができる、みたいな文章が好きなんです。それと、やっぱりアイドルをしている身からすると、そこに可愛らしさが加わって……。表現が難しいんですけれど、ちょっとこう上目遣いで見てる感というか。ぶりっ子まではいかないけれど。そういう愛くるしさみたいなものがプラスされたら完璧ですね、私の中では。でも、もう諦めました(笑)。さすがに無理だなと思って。ちょっと難しかったです、私には。

――理想の文章を書けるかは別として、鈴木さんから自然に出てくる文章の中に、読まれる方々も鈴木さん特有の空気感を感じられているんじゃないかと思います。

鈴木:ただ、自然に出てくる文章も何度も直していて、気づいたら結局始めとは違うものになってしまうので、「果たして私の文体はいったいどれなんだろう?」となることは結構ありますね。そうやってたくさん手を加えた結果、こう見られたい、こう受け取ってほしいみたいな、私のエゴが詰まり過ぎた文章になってしまっているんじゃないか、と。それはブログを書き始めた当初からずっと考えていることです。

――「こう見られたい」という欲からは、皆おそらく逃れられないですよね。

鈴木:それは確実に難しいですけれど(笑)。でも、やっぱり受け取り手は自由であっていいはずなので。それは、私が辞書から教えてもらったことですし。たくさんの意味で捉えられる言葉も使っていきたいなとは思います。

――その境地に至るのは一つの理想かもしれません。

鈴木:もうちょっとなんですけどね。もうちょっとの自分の頑張りで届きそうです。

――受け取り方が自由だとわかっていても、こう解釈されてしまったか……みたいなことはあるはずですし。

鈴木:そうなんです。気にしちゃいますよね。それで、わーっ!てなっちゃったりするので、そこは難しいですね(笑)。

言葉と向き合った2年間

――主に書き言葉の話を伺っていますが、ライブのMCやテレビ、インターネット配信など、その場での話し言葉になるとまた違う難しさがありそうですね。

鈴木:ブログをあまりにも推敲し過ぎているせいで、話したときとのギャップが生まれている気はしています。文章はかっちり決めて書いているのに、話すときには詰まりながらぽやぽや喋るタイプなので。あまりに違いすぎて、ゴーストライターって言われてもしょうがないかなと思ったり(笑)。

――乃木坂46では、長い年月を共に過ごされた秋元真夏さんもグループを卒業されました。秋元さんがキャプテンとして語る言葉を聞く機会も多かったと思いますが、秋元さんの言葉にはどのような印象がありますか?

鈴木:一言で言うと、凄みがある。キャプテンとしての真夏さんは、やっぱり引っ張っていく立場で、言葉でみんなを率いてくださった。でも、友達のように雑談をするときには、なんていうか可愛らしさもあって。たぶん、本人は使い分けを意識されてるわけじゃないと思うんですけど、どちらにも嘘がなくてすごく素敵だなって思います。

――このインタビューが掲載される時点では、乃木坂46メンバーの中で一番長いキャリア背負っているのが鈴木さんになります。その立場として言葉を発信するうえで、何か意識されることはありますか?

鈴木:たぶん意識は変わらないんじゃないかな。責任感がちょっと増すだけで。グループを引っ張る立場を担っていくのは後輩の3期生や4期生になると思うので。

――鈴木さんにとっての後輩メンバーも含め、乃木坂46メンバーは大きな舞台でコメントを求められることも多いですが、いつも言葉が整理されている印象があります。

鈴木:いや、本当にみんなすごいなって思います。私はあんな興奮状態だったら何も話せないのに、的確で言葉にまとまりがあるし、言いたいことも言えている。みんな文章をもっと書けばいいのにって思っちゃうくらい(笑)。本当にすごいですよね。

――『言葉の海をさまよう』は発端となった飯間さんとの対談から数えると、2年近くをかけて書籍化されました。改めて、本書についてご紹介をお願いします。

鈴木:2年間を振り返ると、こんなに言葉と向き合うことになるとは思っていなかったですし、言葉の使い方を改めて考え直すきっかけになりました。辞書って誰しも持っているはずなのに、その中身や作っている人のことはあまり知られていないと思うんですよね。この本でそういう部分を知って、辞書をより好きになるきっかけ、手に取るきっかけになったら嬉しいなと思います。

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