『ガンダムZZ』は『機動戦士Vガンダム』の原型? “大人の傲慢さ”とそれに抗う不良少年たちの物語

『ガンダムZZ』第四話に見る“大人の傲慢さ”

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【第一回】第一話から「総集編」の不穏な幕開け
【第二回】第二話で気づいた『ワイルド・スピード』との共通点
【第三回】第三話に見る規格外の主人公・ジュドーの痛快さ

第四話 熱血のマシュマー

[あらすじ]
 マシュマーの襲撃を受けたアーガマは、シャングリラのジャンクを利用して隠れ場所を探る。一方、当のマシュマーは身分を隠し、シャングリラのホテルに滞在していた。

 Zガンダムの奪取を諦めていないジュドーたちは、またしてもクレーンとプチ・モビルスーツをレンタルしてジャンク置き場に向かう。その道中、部下のゴットン・ゴーと合流したマシュマーとジュドーの仲間たちは接触。さらに病院を盾にしてアーガマを奪おうというゴットンの作戦案にマシュマーが激怒。それによってゴットンがハンドル操作を誤ったせいで、マシュマーはカミーユを散歩に連れ出していたファと接触、ファのことを「天使」と形容する。

 ジャンクヤードに到着したジュドーたち。時を同じくしてマシュマーらもジャンクヤードに到着し、大量の酒瓶に隠して持ち込んだガルスJに搭乗。それに対し、アーガマを奪わせないためジュドーはロープでガルスJに取り付く。

 ロープをよじ登ったジュドーと、コクピットハッチを開けっぱなしだったマシュマーは格闘になる。落下したところを仲間に助けられたジュドーたちはアーガマに潜入。ジュドーはZガンダムを起動させ、マシュマーに対して戦いを挑む。

 ジュドーのZガンダムを追撃するマシュマーのガルスJ。マシュマーはジャンクヤードに仕掛けた落とし穴を使うことを決断。落とし穴の爆発でコロニーの外壁に穴が開き、ZガンダムとガルスJは宇宙空間へと放り出されてしまう。

 コクピットからの酸素漏れに苦しめられながらも、遠心力を利用したキックでガルスJに辛勝したジュドーのZガンダム。しかし結局、Zガンダムはアーガマに回収されてしまう。

 仲間に回収され、シャングリラ内に戻ったマシュマー。移動中にファとすれ違った彼は、邪念によって敗北した自分を戒めるのだった。

 相変わらずアーガマはネオ・ジオンから逃れてシャングリラ内に潜伏し、マシュマーがそれを追うという状況は継続。ジュドーもZガンダムを強奪することはできず、ストーリー的には大きな動きはない回と言っていいだろう。

 そしてタイトル通り、今回はほぼマシュマーが主役だ。ことあるごとにハマーンのことを思い出してはうっとりし、ファに対して「天使」と言い寄る、ギャグキャラとしてのマシュマーの面白さが存分に引き出されたエピソードである。ハッチを閉めずにガルスJで出撃するのは、もはや毎回のお約束という感がある。

 一方で、マシュマーは今回も「ハマーンに認められた騎士」という自らのアイデンティティへのこだわりを見せる。ゴットンによって勧められた「血を流さずアーガマを奪取するため、病院にいる傷病兵を盾にする」というプランに激怒するシーンがそれだ。自らの誇りを傷つけられた怒りのあまり、ハンドルを奪って病院から引き返させる。これはマシュマーの騎士道精神に則った行動ではあるが、民間人もいるであろう病院を盾にするという計画は常識で考えても卑劣であり、苦労人っぽいゴットンも根は冷酷な兵士であることを思い出させる。

 ただ、ギャグっぽい演出とは裏腹に、冷酷さや傲慢さを感じさせるのは、マシュマーも同じだ。前半でジュドーの家へと向かうビーチャやエルたちと接触する場面において、マシュマーはハマーンからもらった胸のバラに手をやりつつ「ああいう子供を教育して、夢を与えるのが私たちの仕事だ」「元気がいい子は戦力になる」と言っている。この発言に対して、ゴットンもさすがに「そうですかね」とあまりピンときていない返答をしている。

 「夢を与える」といえば聞こえはいいが、マシュマーの目的はそれによってネオ・ジオンとハマーンのために戦う戦力を育てることである。「カルト集団が教育した子供を兵士として戦わせる」というグロテスクさは富野監督の後の作品である『機動戦士Vガンダム』でこってりと描写されたが、自らの目的のために子供を教育しようとする人々の醜悪さについては『ZZ』の時点ですでに意識されていたのだろう。

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