大人女性向け情報誌「ハルメク」株式上場へ 定期購読者数50万人を突破した勢いは雑誌市場に波及する?
他誌を圧倒する発行部数の「ハルメク」
雑誌「ハルメク」を出版する株式会社ハルメクホールディングスは、2月15日、東京証券取引所より「東京証券取引所グロース市場」への株式の新規上場が承認されたことを発表した。上場日は2023年3月23日を予定しているという。「ハルメク」は現在出版界でもっとも勢いがあり、発行部数を伸ばしている雑誌である。上場によってさらなる誌面充実が図られるか、注目される。
「ハルメク」と聞いて、聞いたことがないという人も少なくないかもしれない。それは定期購読を中心とした月刊誌であり、書店の店頭には並んでいないためである。こうしたシニア向けの定期購読雑誌では、JTBパブリッシングが出版する旅行雑誌「ノジュール」などがある。「ハルメク」は、これまでになかった50代以上の女性に向けた雑誌として出版された。
日本ABC協会の2022年上半期(1~6月)の調査によれば、掲載誌中で最多部数となったのが『ハルメク』で、前年同期比14.8%増の44万2093部となっている。これは、コミック誌を除く雑誌全体の販売部数で断トツの1位である。参考までに、同時期の『CanCam』の発行部数は約5.4万部であり、「ハルメク」の独走ぶりがよくわかる。
そして、2023年1月18日、「ハルメク」編集部はついに定期購読者数が50万人を突破したと発表した。女性向け雑誌が軒並み部数を減らしている中で、ハルメクの躍進は著しいものがある。他誌を圧倒していると言っていいだろう。
シニア向け雑誌の戦国時代が訪れる?
若者の雑誌離れが叫ばれて久しいが、ファッション雑誌は軒並み低調である。以前はあらゆる出版社が追従してブランドのバッグなどの付録合戦が展開されたが、真新しさがなくなった印象は拭えず、消耗戦の様相を呈していた。付録は豪華であったが、肝心の記事が微妙になった雑誌も少なくなかった。
対して、「ハルメク」は一貫して記事の中身で勝負する手法をとってきた。同誌のWEBページを見ると、アンケートを重視して読者の声を誌面に反映させる編集方針を取っている。これまでのファッション雑誌などは、編集部や企業、代理店主導で情報が発信されるケースが多かった。「ハルメク」は読者のリアルな声を集めることで、痒いところに手が届く誌面作りを行っているのが特徴だ。
50代以上のシニア層はまだまだ雑誌の購読者が多いといわれる。しかし、雑誌「LEON」の編集長を務めた岸田一郎が2017年に創刊した「GG」は、富裕層の男性シニア向け情報誌として注目されたが、1年持たずに休刊となった。シニア向け情報誌では「サライ」が独走態勢にあるが、ライバル誌の「一個人」は既に年4回発行の季刊誌になっている。シニア向け雑誌とて決して安泰とはいえないだろう。
「ハルメク」の上場をきっかけにシニア向け雑誌市場が活気づくか、注目される。ただ、シニア向け雑誌の編集は難しいという声も多い。芸能人を表紙にしたり、ネットと連動してブームを仕掛ける手法が通用しないからだ。いわば、中身で勝負するという雑誌の原点に立ち返る必要がある。「ハルメク」の上場に伴う盛り上がりが、出版業界全体に波及することを強く望みたい。