少女たちによる慣習との戦い アメリカでベストセラー『グレイス・イヤー』著者キム・リゲットが託す次世代への希望


 16歳を迎える少女は危険な“魔力”持つと伝えられるガーナー群では、少女たちを森の奥のキャンプで1年間過ごさせ、魔力を解き放させることで決められた男性の妻となれる。命を失う可能性もある謎の風習「グレイス・イヤー」を生き抜き、主人公ティアニーが知ることになる真実と、その決断とは。

 本国アメリカで話題となり、映画化も進行中の小説『グレイス・イヤー』(堀江里美訳/早川書房)は、少女たちが女性の役割が固定化された習慣のなかで戦い、決断し、行動する物語だ。また現実世界において、少女から大人の女性へと成長する際に待ち受ける男性社会への従属など、女性を取り巻く多くの困難の寓話として読むこともできる次代のポスト・ディストピア小説でもある。本書を執筆したキム・リゲットさんに、少女たちを主人公に本作を描いた理由、伝えたかったことなど、話を聞いた。

––––現代の女性を取り巻く状況について参照できることが見える作品だったと思いましたが、本作『グレイス・イヤー』の物語を描くにあたって着想やきっかけはなんだったのでしょうか

キム・リゲット ある駅で10歳から13歳くらいの女の子が無邪気にはしゃいでる姿を見かけたのですが、そこで通りすがりの男性が値踏みするような視線を彼女にむけていたんですね。またほかの女性が彼女に対して競争相手のように見ていたのを感じました。それらを見て、自分が大人になりかけていることを女の子自身まだ自覚してないし、彼女自身がこれから何が起こるかもわかってないと感じたのです。そうした大人になる前の難しい年頃の女性に対してどのように接していくのか、どうやって守っていくのかと考えはじめたのが、『グレイス・イヤー』を書いたきっかけですね。

–––– 小説では花言葉がとても重要なキーとなっていますが、花言葉を用いたのはどのような理由からなのでしょうか

キム・リゲット 花自体、繊細で、でも一方で強い面も持ち合わせていて女性を連想させるものでもあるので、そうした意味で花言葉は女性同士のコミュニケーション手段として使いたかったというのがあります。

–––– 日本でも家父長制や「女性の役割」という型にはめる考え方がいまだ根強いです。本作でも男女が厳格に分けられ、ティアニーを含め少女たちは女性の役割に盲目的に従います。舞台となるガーナーでは結婚相手は男性が決め、ヴェールや、女性の髪型が同じ三つ編みであったり、リボンも女性の立場によって白、赤、黒と固定しています。このような世界観を作り出そうとしたのはどのような考えがあったのでしょうか

キム・リゲット 現実の社会では男性の注意を惹くためなど、いろいろな理由で女性間で互いに対比させ、女性と女性が競争するような、団結を阻んでいる構造があると思っています。そんなかで『グレイス・イヤー』では、女性が連帯して、お互いが話し合い、同じ場所で生活することを重要な要素として描こうと考えていました。

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