【アメリカの最新ブック事情】第3回 What is zine?
私とzine制作
そんな文化に触発され2021年夏、初めてzineを作った。これまで本の編集の仕事をしてきたが、イラストや文章をかくのから印刷・製本・流通まで、全てをこなすのは未知の体験。試行錯誤しようやく、本文8ページのzineを作り上げた。
そのzineで「サンフランシスコ・ジン・フェスト」にエントリー。2021年はオンライン開催ではあったが、市内の書店で作品を取り扱ってもらう機会に恵まれた。たった10部ではあるが、手作りしたzineが「売り切れた」連絡をもらった時の喜びは格別だった。
時を同じくして、zineを制作している素晴らしい友人ができた。さらには「売りたい」と声をかけてくれる書店、熱い感想を送ってくれる読者の人々に後押しされ、気がつけばこの1年で、5冊のzineを作っていた。
2022年サンフランシスコ・ジン・フェスト
今年9月の「サンフランシスコ・ジン・フェスト」は、念願のリアル開催。200を超えるzineアーティスト(ジンスタ)が出展した他、シルク印刷やリソグラフ印刷のワークショップ、パネルディスカッションなど、大変な盛況だった。
買ってくれる人は果たしているのだろうかと、ドキドキしながら私も出展したのだが、私のzineを手に取るため会場に来てくれた人、思いの丈を述べてくれる人、近郊で活動するジンスタたちと話し、忘れ難い1日となった。
自分の考えを表現するのは、非常に勇気のいる行動である。言葉やアートは世に放たれた瞬間その人を離れ、受け手の解釈が加わっていく。だから面白い、だけど難しい。とりわけ「zineフェス」のような、異なるバックグラウンドを持った人が数多く集うフェスティバルは、様々な工夫が必要だ。
締めくくりに「サンフランシスコ・ジン・フェスト」の、場をより安全に保つため運営が掲げているポリシー「Safer Spaces Policy, San Francisco Zine Fest」の内容を少し紹介したい。zineの世界の魅力、そしてサンフランシスコ・ベイ・エリアの良さが伝わるのではないかと思う。
「サンフランシスコ・ジン・フェストとその運営者たちは、ジェンダー、性自認、性表現、性的指向、身体障がい、外見、体の大きさ、人種、宗教に関わらず、全ての人にとってハラスメントフリーな経験を提供できるように努めます。」
「・人の意見、信条、他者性、異なる物の見方を尊重しましょう
・人の写真を撮ったり、他の人の個人の境界線を越えるような時は、必ず口頭で、明確な同意を得るようにしましょう
・自分の行動に責任をもち、自分の意図とは関係なく、それらが他人に影響を与える可能性があることを認識するようにしましょう
・安全で他者への敬意あるコミュニティの維持は、全ての人の責任です。したがって、互いに気を配り、困っている人や助けを必要としている人を見かけたら、声を出して下さい」
備考:zineの歴史についての説明は、下記を参考にしました。
“Fanzine,” The Encyclopedia of Science Fiction, October 18, 2022.
Laura Van Leuven, “A Brief History of Zines,” University of North Carolina University Library, October 18, 2022.
Gabriel Moore-Topazio, “SF Zine Fest Is Back and Has a New Venue!,” Broke Ass Stuart, October 18, 2022.