【ラノベ週間ランキング分析】『ベン・トー』のアサウラによる『リコリス・リコイル』ノベライズが1位

新刊ライトノベルの他の注目作品は?

 『リコリス・リコイル』というアニメーションが始まって、ストーリー原案にアサウラという名前を見た時に、ちょっと長めにライトノベルのファンをしている人だったら、スリリングな銃撃戦で楽しませてくれる作品になると確信したことだろう。

  想像に違わずアニメ『リコリス・リコイル』は、日本の治安を秘密裏に守っている組織「DA」と、そこに所属する少女ばかりの暗殺者集団「リコリス」の存在を鍵にして、錦木千束と井ノ上たきなの2人が出会い繰り広げられる銃撃戦の迫力と、2人の関係を中心とした日常描写の楽しさで、すぐさま大人気となった。

  そのノベライズをアサウラ本人が書き下ろすということで、発売前から2度の増刷が行われた『リコリス・リコイル Ordinary Days』(原案・監修 Spider Lily、電撃文庫)が、Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(9月12日~18日)で堂々の1位となった。増刷分も店頭からすぐに消えてしまってファンをやきもきさせている。電子書籍も発売されているが、文庫版にはゲームクリエイターの小島秀夫が顔を出し、「僕のリコ遺伝子を、リコイルする!」とコメントした帯がついている。小島監督ファンなら手元に置いておきたい逸品だ。

 その内容はといえば、確かにスリリングなバトルがあり、喫茶リコリコでの楽しげな日常もあって『リコリス・リコイル』味を堪能できるが、塩梅としてはスイーツ分が多めで、そこに千束とたきなの喫茶リコリコでの暮らしが絡み、銃器にまつわる描写が差し挟まれるような感じ。アニメの方で、生死をかけて犯罪者に挑むリコリスたちの苛烈な日々であり、クライマックスに向けて浮かび上がって来た千束の残酷な身の上といったものに触れた人にとって、癒やしをもたらすスイーツのようなノベライズだ。

 振り返れば、銃と少女とアクションはアサウラにとって重大なモチーフだった。第5回スーパーダッシュ小説新人賞で大賞を獲得した『黄色い花の紅』は、暴力団組長の娘と、『リコリス・リコイル』に出てくるミズキの原型のような、警備会社のようなところで働くアラサーの女性が出会い共闘する話だった。アニメにもなった『ベン・トー』は、スーパーの半額弁当奪取に全力を傾ける、女子高生の槍水仙を始めとした”狼”たちの壮絶な戦いを描いた物語だった。

 『デスニードラウンド』のシリーズにいたっては、不死身となって襲ってくるファーストフードや警察や巨大テーマパークのマスコットを相手に、借金返済のため傭兵となっていた女子高生が戦う話。『リコリス・リコイル』のガンアクション分を煮詰めたような内容で、勢いを駆ってアニメ化といきたいところだが、敵の設定を考えると乗り越えるべき山は相当に高そう。億にひとつの可能性を願いつつ、小説を読んでリコ・リコ分を補充しよう。

  アサウラは、ノベライズと同時に『小説が書けないアイツに書かせる方法』(電撃文庫)も刊行。自分の境遇を瑞々しい文体で綴って小説の新人賞を受賞しデビューしたものの、2作目を書けないでいた男子高校生の月岡零に、一ノ瀬琥珀という名の初対面の美女が、自分の考えた小説を書けと持ちかけてきた。そして始まった共同作業の中で、零は琥珀の才能と正体に気づく。小説とはどのように書けば良いのかを考えさせてくれる作品だ。

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