自炊料理家の山口祐加が語る、料理を簡単に続けるコツ「真面目に考えすぎず、気楽にやっていい」
コロナ禍で家にいる時間が増え、改めて自炊に取り組んでみようと考えた人も多いのではないだろうか。ただ、料理に慣れていない人だと「自炊はめんどくさい」「材料が余ってしまう」といったネガティブなイメージを持ちがちだ。『楽しくはじめて、続けるための自炊入門』(note・スマート新書)の著者である自炊料理家の山口祐加氏に、ご自宅で自炊のコツについて聞いた。(藤井みさ)
料理の輪の「外側」にいる人たちを呼びこみたい
――山口さんは「自炊料理家」というユニークな肩書きを名乗っていらっしゃいますが、どういった経緯でここに行きついたのでしょうか。山口祐加(以下、山口):大学を卒業して社会人になってから、出版社やPR会社で働き、食関係のことに携わりたくてフリーランスになりました。料理の仕事をしたり、ケータリングをやったり、取材したりとしていましたが、だんだん「なにがやりたいのかわからない」みたいな漠然としたモヤモヤが出てきてしまって。
いろいろ考えていくと、世の中にある料理のコンテンツは、そもそも毎日料理する人や料理が好きな人向けだなと改めて気づきました。だから私は料理の輪の外側にいて踏み出せていない人たちに料理を始めてもらう、好きになってもらうための補助輪的な立ち位置になれたらいいな、と考えて、2019年の2月から料理家と名乗り始めました。
――最初は「料理家」だけだったんですね。
山口:はい。ただ、料理家と名乗ると先生的な扱いをされるんです。私は先生になりたくて料理家になったわけじゃない。先生って「解き方を教える人」って印象が強いんですよ。どちらかというと「個人がそれぞれ心地よく料理に触れる方法を探ってほしい」という気持ちが強かったので、ずっとそのことにギャップを感じていたんです。
その時実家に住んでいて、父と毎朝コーヒーを飲む習慣があったんですけど、その時に「私のこれからをどうしていくんだ」って会議を1年間ぐらい続けてたんです。それである日突然、父が「自炊料理家ってどう」って言ってくれて、すごくしっくりきて、名乗ることにしました。
自炊はもっと、簡単でいい
――ご自身は7歳から家のご飯を作られていたということですが、料理の楽しさを感じたのはいつ頃からですか。
山口:それはもう、料理を始めた時からですね。切れないものが包丁を使えば切れる、固いものが煮たり焼いたりすれば柔らかくなるって、なんか楽しいじゃないですか。親が共働きだったので、私が楽しそうに作っているのを見て「しめしめ」と思ってたようです(笑)。子供心には楽しいし、親は喜ぶし、作ったものは美味しい。食べたらなくなるので「また明日は何作ろう」みたいな感じで、いい趣味を見つけたなとたぶん7歳なりに思っていたんです。
だからある意味、「料理が嫌いなんです」という人たちの気持ちがわからない、とも言えるんですよ。だけど、私の感じている「楽しさ」っていうのが、みんなが思っている「料理」のもっと手前にあるんじゃないかな? というのは考えていて……。料理が苦手な方は、料理の「楽しさ」がものすごい手数を重ねた先にあると思っていることが多いなと感じています。
――気持ちがわからない、という中、どうやって料理のイメージを変えていくのでしょうか。
山口:トウモロコシは茹でるだけで美味しいじゃないですか。私はそれも立派な「自炊」だと思ってるんですけど、どうしても肉や野菜を切って、炒めて、いろんな調味料を組み合わせてってすることが自炊だと思ってる人がすごく多くて。みなさんが思っている「料理」と、私が考える「美味しい、楽しい」をすり合わせていくと、肩の力が抜けて「こんなのでいいんですか」「これなら続けられそう」って言っていただけるんですよね。