渡辺満里奈 × 橘真子編集長『大人のおしゃれ手帖』対談 「50代以降は、自分自身を大切にすることが大事」


近年、性差に関する意識の高まりもあり、それまでタブー視されてきた女性の健康課題について語られることが増えてきた。タレントの渡辺満里奈さんも、歌手の野宮真貴さん、モデルの松本孝美さんとともに『大人の女史会』を結成し、50代からの女性の健康や更年期について、さまざまな情報を発信している。
一方、メディアでも女性誌『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)が、50代女性向けのファッションや生活情報とともに、健康課題についても盛んに取り上げている。今回はその『大人のおしゃれ手帖』の橘真子編集長と渡辺満里奈さんの対談を実施。50代女性が抱える健康課題や生き方について、リアルな言葉で語ってもらった。
渡辺「更年期でも明るく笑っている先輩の姿を見ていた」

ーーもともとファッション誌の『大人のおしゃれ手帖』で、更年期など50代女性の健康課題の企画が好評と聞きます。どのような点が評価されたとお考えですか。
橘:雑誌というと、目で見て楽しい、すてきだと思えることを提案するものだと思うのですが、そこに具体性があったほうがいいと考えていました。センスがいい人たちの暮らしやおしゃれの仕方は参考になるけれど、自分がどうそこに近づくかとなると、どうすればいいのか、なかなかわかりません。それもあって、どう取り組めばいいのか、ハウトゥーの部分をより丁寧に紹介していくということが、『大人のおしゃれ手帖』の基本にあります。
それに加えて、服や暮らしのセンスというのは、人それぞれのもので、みなさん同じではありません。ただ、体のことになると、特に50代以上はだいたい同じような悩みを抱えている人が多いんです。そんな、体のメンテナンスやちょっとした不調に対する対処法などを、より身近でより役に立つ形で、特集を組んで提案していくようにしました。そちらでも読者が置いてけぼりにならないよう、具体策を提示することを意識したので、その点が評価されたのかと思います。
渡辺:宝島社と聞くと、私の世代ではとんがった感じのファッション誌というイメージがあったんですが、『大人のおしゃれ手帖』は親しみやすくて、私の世代にドンピシャです。“こういう情報が欲しかった!”みたいな記事が多くて、すごくすてきなんだけれど、ちゃんと地に足をつけて生活しているイメージがすごくあります。

ーー50代という世代になると、更年期が大きな健康課題としてあります。どのようなスタンスで扱っているのでしょうか。
橘:一般的に女性は、更年期にあらわれる体の不具合や、今までできていたことがうまくできないというような、自分自身の変化にすごく敏感です。それに対して自分ができるセルフメディケーション、どう自分を養生するか、と捉え直すとセルフケア自体が楽しいと感じることができる。こういう不調があるけれど、これをすればちょっと心が軽くなれる、ポジティブに捉えられるコンテンツを届けたいと考えています。
女性の健康課題についてもっとオープンに皆で話せる社会にしていきたいという想いで、会社としても世代別の女性誌10誌と男性誌2誌で「もっと話そう!Fem&」プロジェクトを行なっています。プロジェクトでは、各世代別の女性特有の悩みについて発信したり、男女間での理解促進のために男子校での性教育授業なんかもしているけれど、中でも『大人のおしゃれ手帖』では「更年期」についての普及が大事だと思っています。(参考:宝島社がフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう! Fem&」発表)
ーー渡辺さんは更年期には、どんなものがありましたか?
渡辺:私はものすごい体の不調や、汗が止まらなくて困ったとかの症状はなかったんですが、52歳を過ぎたぐらいからひどい乾燥肌や、口や鼻の乾きを感じるようになりました。

橘:私はまだ40代なので、夜、寝つきが悪くなったぐらいで、徐々に始まってきているのかなという感じです。座談会を開いて読者の皆様にお集まりいただき、エピソードや対処法を教えていただくなど情報収集を継続しています。
渡辺:私は更年期になる前は、どんな感じになるんだろう、どんなふうに変わっちゃうんだろうとか考えていたんですけど、更年期がいつから始まるのか、どういう期間なのか知るだけでも、ずいぶん気持ちは違うと思います。
橘:知っていれば、いざ始まったときに、自分をケアしていこうってスイッチを切り替えられますから。
渡辺:私は更年期でも明るく笑っている先輩の姿を見ていたので、こういうふうに過ごせばいいのかとか、こんなことがあるんだとか明るく思えたんです。だから、いつから始まるか、なにが起きるかもわからなくて不安な人たちのために、大丈夫だよ、楽しいよって、自分も情報発信をしていければいいなと思っています。
橘「はっきり家族に伝えるのは重要」

ーー更年期を迎えて、精神的な変化はありましたか?
渡辺:子どもや夫(ネプチューンの名倉潤さん)、家族のことや仕事のことで気持ちは左右されるので、どれがそうとはわかりにくいんですけど、すごくイライラするときに、“これ更年期なのかな?”と思うことはありました。
あと、鏡を見たくない、気持ち的に自分の老いを受け入れられない時期はありました。シワとか気になって自分を直視できない、見ないですむならスルーしたいという気持ちです。ただ、そのうちに受け入れられないとか言っている場合じゃない、ちゃんとケアしなきゃと思う段階になって、自分を大切にしてあげなきゃいけないんだなと思うようになりました。
ーー自身の更年期について、家族には話しましたか?
渡辺:あらたまってというのはありませんが、イライラしているときに、“ごめん、更年期だから”とかは言っていました。
橘:はっきり家族に伝えるのは重要だと思います。読者から、リビングにS字グラフを貼って、お母さんの今日の気持ちはノーマル、今日は沈んでいると、グラフに鳥のマークを貼って家族に知らせているというメールが来たんです。そうやって家族に見えるようにして、言葉にしなくてもわかる状況を作っていると。
渡辺:共有するのは必要です。夫はすごく気遣ってくれて、私がイライラしているときは、しゃべりかけないでいてくれたりします。
ーー沈んでいる状態、イライラしているときは家族にどうしてもらいたいですか?
渡辺:むしろ、なにもしてもらいたくないです。なにもしたくない、ごはんも作りたくないときは、今日はデリバリーでいいですかって、はっきり言います。あとはみなさん、それぞれでやってくださいと。ただ、“デリバリーでいいよ”って、そういう状況を普通に受け入れてくれるだけで十分なんです。病気でもそうですけど、一番つらいのは理解してもらえないことなので、家族だけは理解してくれる、わかってくれるだけで気が楽になりますし、一番の精神安定剤になるんです。
ーー家庭ではなく、仕事の場ではどうでしょうか?
渡辺:仕事はもうやるしかないです。具体的に体に症状が出ているわけではないので、そんなこと言っている場合じゃないという感じで、忘れています。
橘:ただ、頑張ってやったぶん、家に帰ったらどっと疲れたり、反動でなにもやる気が起きなくなるので、家族の理解が必要になってくるんです。























