一見好対照なサッカー漫画『アオアシ』と『ブルーロック』をつなぐ、オシム監督の教え 「考えて走る」ことの大切さを読む

『アオアシ』と『ブルーロック』をつなぐもの

 部活動とは違うクラブチームのユースという場所で繰り広げられる、プロのサッカー選手を目指して切磋琢磨する少年たちの心情にも触れながら、サッカーのテクニックや戦術について学べる教本のような漫画とも言える『アオアシ』。対して『ブルーロック』は、ユース年代の300人のフォワードを監獄のような場所に閉じ込めて競わせ、サッカーの歴史を変えるようなストライカーを生み出そうとする荒唐無稽な設定が特徴だ。

 300人は12人ずつのチームに分けられ、最初にそのチームで「オニごっこ」が行われる。ボールを当てられた人がオニとなり、136秒の制限時間内で最後にオニだった人が脱落するそのゲームに負けた選手は、「サッカーとなんの関係があんだよ!?」と叫ぶ。確かに『賭博黙示録カイジ』のような振り落としのためのデスゲームだと思えなくもないが、プロジェクトを指揮する絵心甚八コーチは、136秒という時間の合理性を説き、まだ1秒あった残り時間に別の選手に当てようとしなかった脱落者の消極性を非難した。

 他人をおしのけてでも生き残ろうとするエゴイズムはもちろん、ラストワンプレーのチャンスを見逃さず、諦めない積極性がストライカーに必要な要素だということを、いきなりぶちかましてくるストーリー。以後も、残った11人がチームを組み、5チームのうち2チームだけが次に進める総当たり戦に臨む中で、フォワードしかいないはずのメンバーに役割が生まれ、チームとしての形が生まれていく。

 ドリブルが得意な選手もいれば、ジャンプ力に優れた選手もいる。左足のシュート力が高い、肉弾戦で負けない、足が速いといった持ち味をつなぎ合わせてチームとしての総合力を高め、ランク上位のチームを喰っていく展開が実に痛快だ。

 そこでも、やはり求められるのが「考える」こと。自分たちの得意なプレイは何か。敵の意図はどこにあるか。味方は何を思っているか。それらを常に考えながら、最適なプレイを選び取っていくというサッカーのセオリーを、荒唐無稽なシチュエーションの中でしっかりと語っているところに、『ブルーロック』のサッカー漫画としての妙味がある。

 設定は真逆でも、共に「考えて走る」というオシム監督の言葉が感じられる2作品。面白いのは『ブルーロック』で主人公の潔世一が持っていた才能も、『アオアシ』の葦人が福田に認められた才能も同じという点だ。

 どのような状況でも確実に決めるエゴイスティックなストライカーもカッコ良いが、それよりも潔であり葦人のように、広い視野から試合の流れを把握し、決定的な仕事をするプレイヤーの方が日本人には好まれるのかもしれない。そんな選手が今の日本代表にいるのかも含め、11月にカタールで開幕するW杯をより深いところまで楽しむために、読んでおくべき作品たちだ。

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