【漫画】なぜか漫画の3巻だけを購入する女、その目的とは? 『オールドメイドは古書店で』が面白い

ーー小さなきっかけでつながるふたりの関係が魅力的だと感じました。創作のきっかけを教えてください。

小野未練(以下、小野):この漫画は2022年2月に開催されたコミティア(オリジナル作品の即売会)に合わせて制作した作品です。2021年は各出版社が主催する漫画賞に応募するため作品を制作していたのですが、少し肩の力を抜いた作品をつくりたいと思い本作を描きました。

ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンを教えてください。

小野:3巻だけ購入することを図で説明したシーンです。コマのなかに映っているうさぎ耳のキャラクターは本作と合わせコミティアで出品した別作品にも登場しています。ふたつの作品につながりを持たせたいと思い、本作でも彼女を描きました。こういった遊び心を出すことができることも即売会の魅力だと思います。

ーー作中では『寄生獣』(講談社)や『ファイアパンチ』(集英社)などが描かれていました。

小野:これらの作品は自分の本棚にあった本であり、どれも自分の好きな作品です。

ーーラストシーンでは『噓喰い』(集英社)も描かれていましたね。

小野:『噓喰い』では作中にババ抜きをするシーンがあり、本作のテーマにもあっているので背景の一部として選びました。『噓喰い』のなかで登場人物が図を用いて説明するシーンがあるのですが、3巻だけ購入することを図で説明するシーンも『噓喰い』のパロディとして描きました。

ーー影響を受けた作家さんを教えてください。

小野:市川春子先生や藤本タツキ先生、こうの史代先生の作品が好きで、顕著に影響を受けていると思います。とくに今ほど挙げた方の短編漫画が好きで、短編漫画をたくさん描いている作家さんが好きです。

ーー3巻だけ購入するという行為を描こうと思った背景を教えてください。

小野:深い意味はありません。ただ3巻だけ購入するという無意味なことでバタフライエフェクトのように影響を与えられたらいいなと思っていて。自分の言いたいことや描きたいことを表現した漫画をインターネットの海に投げることで、読んでくれた人に影響を与えられたらと意識していたのかもしれないです。

ーー漫画を描き始めたきっかけを教えてください。

小野:小学生のころからダラダラと絵を描いていたのですが、漫画を描き始めたのは大学に入学してからです。コミティアに参加しようと思ったことが漫画を描くきっかけとなりました。偶然インターネットで見かけた「たいぼく」さんという方の絵がすごく好きで、私自身とても影響を受けました。その方が参加していたことからコミティアの存在を知り、Twitterで知り合った友人と一緒にコミティアに参加しました。

ーー漫画を描き続ける理由とは?

小野:運よく引っかかればいいなと思い、コミティアに参加するために描いた30ページくらいの作品を漫画賞に応募しました。その作品は落選してしまったのですが、悔しさが芽生え次は賞に選ばれてやると走り始めてしまい、今も漫画家を目指し漫画を描いています。

 ただ漫画家になりたくて漫画家を目指しているわけではありません。授業中の落書きも含め、勉強や就職から逃避するため絵や漫画を描いてきました。逃げ続けた結果として漫画家を目指す道にたどり着いたので、漫画から逃げてはダメだと思っています。

ーー漫画を描くなかで意識していることを教えてください。

小野:はじめに自分の描きたいシーンがあって、そのシーンが成立するように中身を詰めていくという感じでお話をつくっています。そのなかで私が作りたいのは誰かが誰かに救われるというシーンで。誰かの言った何気ない言葉に救われたというかたちがすごく好きで、本作で描いたような、はたから見たら無意味なことが誰かに影響を与えることにつながるのかもしれないです。

ーー今後の目標を教えてください。

小野:ここ1年くらいは懇意にさせていただいている出版社の媒体で多くの作品を載せていただけるように頑張りたいと思います。今年の夏に読み切り作品を掲載させていただくことが決まっているので読んでいただけたらうれしいです。今後Twitterで告知したいと思います。

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