「ジャンプ+」のインディーズ連載『ゴダイゴダイゴ』はなぜ期待できる? 作者・コウノスケの経歴と能力から考察

 マンガアプリ『少年ジャンプ+』で連載中の一風変わったヒーロー活劇『ゴダイゴダイゴ』が面白い。

 本作は、「ジャンプ+連載争奪ランキング」にて連載枠を獲得したインディーズ作品だ。編集部のネームチェックを経ずに自由に連載ができる枠で、読者に読まれるほど“ボーナス金”が支払われ、作者の応援に繋がるという、新たな才能を世に送り出すための画期的なシステムである。

 本作の主人公は、30年間、東京を怪獣から守るために戦い続けてきた巨大ヒーロー・後醍醐ダイゴ。怪獣と戦うときに巨大化するわけではなく、常に大きい「巨人」である。そのため、生活の維持にも洒落にならないお金がかかり、スポンサー企業のサポートを受けているが、「ヒーローのエンタメ化」の流れに乗れない“おじさんヒーロー”ダイゴの家計は、常に火の車だ。しかし読者には、不器用ながら誠実で誰よりも優しいダイゴが、すぐに本物のヒーローに見えてくる。

 描かれるエピソードはオーソドックスな人情話とも言えるが、最初はダイゴを馬鹿にしていたイケメンヒーローの生い立ちのエピソードに冷たい汗をかかされたり、そもそも、空から降りてきて、ヒーローとひとしきりプロレスをしたあと、風船のように膨らんで空に戻っていく怪獣の存在自体が謎だったり、既視感を覚えないフックになるポイントが多い。

 前知識なく本作を楽しんでいる読者には、この不思議な世界観がどれだけ整合性を保ち、熱量を維持できるか、不安に思う人もいるかもしれない。しかし、作者を知っていれば、このまま走り続けてくれるだろうという確信を持つことができる。

 本作を手がける「コウノスケ」氏は、もともとTRPG(テーブルトークRPG)の分野で有名人で、シナリオ制作者としても、GM(ゲームマスター)としても、多くのファンを獲得してきた配信者だ。

 詳しくない方のためにざっくり説明すると、TRPGとは、あるシナリオの中で、最初に設定したキャラクターになりきったプレイヤーが自由に行動を選択し、目標の達成を目指すロールプレイングゲームだ。行動の成否はダイスの出目で決定するのが一般的で、当然、難易度が高かったり、適性のない行動ほど成功率が下がる。勘がいいプレイヤーは、ダイスの出目次第で一足飛びに結末にたどり着いてしまうかもしれないし、運が悪ければ、某調査兵団のごとく何の成果も得られずに死亡して終了、ということもあり得る。

 それをうまくさばき、一つの楽しい物語(セッション)に織り上げていくのが、GMの腕の見せどころだ。プレイヤーからいいアイデアが出れば適切なボーナスを与え、ときにはNPCとして登場し、ほどよく軌道修正をする。つまり、常に破綻する可能性を孕んだ物語をリアルタイムで管理し、プレイヤーたちが納得する結論に辿り着かせる、という役割を無数に演じ続けてきたのがコウノスケ氏なのだ。彼がGMを務めたセッションがいくつか、簡単なイラストつきで動画化されているが、プレイヤーたちの個性もあって、まさに一つのマンガ/アニメを見ているかのような、緊張感と楽しさのある作品になっている。

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