プロ漫画家は“コマ割り”の導線をどう作っている? スムーズに読ませる驚きの技術

 普段、漫画を読んでいて「コマ割り」を意識する読者は、それほど多くないだろう。誰に教えられたわけでもなく、ストーリーを目で追い、一連の流れとして楽しむことができている。それは、漫画家が巧みに視線を誘導し、各コマのつながりやカメラアングルまで意識して、読者を物語に没入させているからに他ならない。

 そんなことがよくわかる動画が、元週刊少年漫画誌の連載作家・ペガサスハイド氏のYouTubeチャンネルで公開された。同チャンネルの動画の多くは、視聴者から寄せられた一見上手な漫画やイラストについて、プロの目線で細かく添削するというもの。解説のわかりやすさとともに、あくまで本人の長所を生かしアドバイスが心地よく、自分では絵を描かない人も楽しく視聴できるのも、大きな魅力だ。チャンネル登録者数は15万人を超える。

 2月12日に公開されたのが、「【プロのネーム42】週刊連載漫画家がうまく描けるコツを教えます~なつかしい雰囲気の少女漫画~」と題された動画だ。今回の添削希望者であるクルミさんは、自身のInstagramでオリジナルの漫画を公開しているという。

【プロのネーム42】週刊連載漫画家がうまく描けるコツを教えます〜なつかしい雰囲気の少女漫画〜

 クルミさんのお悩みは、「背景や全身を描くのが難しい」というもの。ペガサスハイド氏はクルミさんの漫画をチェックし「少し前の時代の絵柄だと思うけど、こういった絵を好む人も確実に存在する。何も流行を追うばかりが正解とは限らない」とコメント。それから「このページを見るだけで“何かヤバイことが起こっている”というのは把握できる。それをさらにレベルアップさせるにはどうしたらいいかを解説していきたいと思います」と続けた。

 まずこの漫画は男性2人が“ハンター”に追われている様子が描かれているようだ。詳しくは動画を確認していただきたいところだが、その上でペガサスハイド氏は「元のイラストで気になったのは、コマとコマが繋がって見えないということ。2コマ目で(男性)2人がどんな場所に立っているのかもわからない」「さらにそこに誰のかわからない手も伸びてきた。これでは読者が困惑してしまいます」と、具体的に問題点を指摘した。

 さらに「4コマ目では左の男性が右の男性につかみかかっているのがわからなくもない……けれど、前のコマの影響でそれが伝わりにくくなってしまっている」と話した。そこでペガサスハイド氏は2コマ目ではっきりと男性2人がハンターから逃げ切ったのが伝わってくるように、疲れている様子や、どこかの部屋に逃げこんできたことが伝わってくるコマを仕上げている。アドバイスを送るだけでなく、実践して見せるのがこの動画シリーズのいいところだ。

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