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【今月の一冊】映画紹介からYouTubeチャンネルのノウハウまで おすすめエッセイ&ノンフィクション作品を紹介
『作家と珈琲』平凡社編集部
表紙の有吉佐和子さんのかけているはいからな眼鏡と前髪のバランス、視線の先にはどんな絵がかかっているのだろう、ライトが列なる奥行きのある店内に思いを巡らせ、カップの持ち方のエレガントさに、うっとりしながらページをめくりました。
平凡社の「作家と」シリーズは猫・犬・おやつ・酒と続いて今回は珈琲。なかなか良いところをついてきます。
絵や漫画、文章を織り交ぜながら、さまざまな時代背景や言葉使いの違いも楽しめました。水木しげるさんの漫画のページでは日常の散歩風景があり、沼田元氣さんのページにふむふむとうなづき、鷲田清一さんと木村衣有子さん対談は興味津々で、林芙美子さんの巴里日記には素敵な朝時間がありました。
中でも多和田葉子さんの「ゆずる物腰ものほしげ」のページでは珈琲の頼み方についてのお話、とっても面白かったです。
「コーヒーで」と「コーヒーを」
言葉ひとつでこんなにも違うものかと思いました。行きつけの喫茶店、ご自宅、旅先で思い思いの楽しみ方が46編。珈琲の香りが鼻の奥をよぎりながら、読み終えたあと、ぼんやりいろんなことを考えながら豆を挽いて珈琲をゆっくり落としました。心落ち着くひと時となりました。(後藤由紀子)