『3月のライオン』二海堂晴信の存在はなぜ重要なのか 物語に吹き込む明るさと情熱

『3月のライオン』二海堂晴信はなぜ重要?

苦しみは表に出さず、人を鼓舞する二海堂

 もっとも、二海堂はただ楽天的なお気楽キャラではまったくない。二海堂には持病があり、腎臓機能系の病気だと描写されている。対局中に気分が悪くなって、倒れてしまったこともある。それでも「努力と才能の世界」である将棋の世界で、桐山と同様に、孤独を友として自身を高め続ける二海堂の姿。自分の苦しみは表に出さず、周囲に明るさをもたらしさえするその姿勢に、励まされる読者も多いだろう。

 そして将棋の実力も、“盛り上げキャラ”の枠にはとどまらない。将棋ファンの中には、二海堂堂と、1998年に夭折した天才棋士で、同じく腎臓系の難病を抱えていた村山聖(むらやま・さとし)を重ねて見る向きもあるが、その成長ぶりと盤に向き合う姿勢には、鬼気迫るものがある。

 2022年1月現在の最新刊である、『3月のライオン』16巻では、桐山と二海堂のライバル対局が始まったばかりだ。その行方とともに、淡々と、深く沈み込むような描写も多い本作に、“明るさ”と“熱さ”という彩りを与えてくれる二海堂の今後にも、引き続き注目していきたい。

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