『鋼の錬金術師』20周年で振り返る名キャラクター 女性も惚れるオリヴィエのかっこよさ

 今年で連載開始から20周年を迎え、12月18日には池袋サンシャインシティにて原画展がスタート、同時にアニバーサリーブックが発売されるなど、いまなお多くのファンに愛され続ける『鋼の錬金術師』(ハガレン)。本作には、さまざまな過去を背負ったかっこいい大人が多く登場する。そのなかで、アメストリス国軍少将、オリヴィエ・ミラ・アームストロング(以下、オリヴィエ)について、今回は語りたい。

 筆者がはじめてハガレンを読んだのは20~21歳頃のこと。当時好きになった登場人物のひとりがオリヴィエだ。強く、かっこいい女性だと憧れを抱いていた。

 あれから15年近く経ち、筆者は35歳になった。これまでずいぶんと年上だと感じていたマスタング大佐(29~30歳という設定)の年齢をこえていた。そしてオリヴィエにいたっては、はっきりとした年齢はわからないが、マスタングのことを”青二才”と呼んでいたことも考えると、30代後半~ではないだろうかと思う。となると、いまの筆者はオリヴィエの年齢に近いところまできたのだ。

 少しでも彼女に近づけたのだろうか……と、ふと思う。 “大切なことは漫画から教わった”という言葉もあるが、筆者はその作品のひとつに『鋼の錬金術師』を挙げるだろう。あらためてオリヴィエのかっこよさとはなにかを考えてみる。

オリヴィエのかっこよさ、その根源にあるもの

 オリヴィエが司令官を務めるブリッグズ要塞は、敵国ドラクマとの国境を守る、落とされてはならぬ地だ。オリヴィエは国境を守るために一貫した考えを持っている。「いかな事があろうとも末端の兵ひとりひとり隅々まで、主の意思の元に強くかつ柔軟に動かねばならない」「何事にも動じない屈強な一軍であらねばならない」と断言し、かつ「その力になるならどんな技術でもいただく」と、規律を重んじながら、危機意識と向上心を常に持っている。それを率先して体現しているのがブリッグズの北壁、氷の女王という異名を持つオリヴィエ自身だ。

 さらに、オリヴィエのかっこよさを感じる場面をいくつかあげてみよう。

1.エルリック兄弟との初対面シーン(16巻)

 オリヴィエらしい、有名なシーンのひとつだ。エルリック兄弟がはじめてブリッグズを訪れ、オリヴィエとの面会を希望した際、弟のアレックスからの紹介状を受け取ったにも関わらず、内容を見ずにその場で破り捨てる。

「私以外の他人が付けた評価なんぞいらん」「私は私の目で人を判断する」

 オリヴィエは風評を信じず、人づてに聞いた話や他人の思惑に振り回されるようなことはしない。結果として同じ結論に行き着くとしても、まずは自分の目で確かめることが大事であると、一貫した姿勢を持っている。これは私たちの日常にも、そのままいえることだろう。当事者は自分である。こんな単純なことでも、実はできていないことが多いのだ。

 当事者意識を持ち、自分で考えて判断するという哲学は、作中でオリヴィエが度々口にしている。たとえば以下のようなシーンだ。

・ブラッドレイ大総統が爆破事故に巻き込まれ、軍部上層部が混乱しているのを横目に「頭がいなくなったとたんこれだ」「しょせん自分の損得で動き、民草の事を考えぬ烏合の衆か」と思っているシーン(21巻)

・アレックスとともにスロウスと戦っている最中、近くにいた中央軍が上からの命令でオリヴィエを殺そうとしている局面で、「我らを打ち殺してのちに化け物の餌食になるか!それとも我らと協力して化け物を討つか」「自分の頭で考えろ!!」と中央軍に迫るシーン(23巻)

 こうしたオリヴィエの言葉は随所に散りばめられており、他人任せで当事者意識を持たない者に対する態度は、一貫して厳しいものになっている。

2.マイルズを配下においた理由を語るシーン(16巻)

 確かに、不確かな情報に振り回されず、自分の目で確かめることは大事だ。とはいえ、一人の人間の知見·経験には限界がある。それをオリヴィエは理解しているのだろう。自分の部下の配置において、彼女が自身の能力を過信していないことがわかる。特にマイルズには、「多様な価値観を持ち様々な角度からこの国を見る事ができる血だ」「生まれも育ちも血も生粋のアメストリス人である私が上に立つには貴様のような者が必要だ」「四の五の言わず付いて来いマイルズ」と語っており、これにはマイルズも「実に合理的、そしてごまかしの無い言葉だった」と話している。

 自分の目で見て考え、かつ偏った判断にならないよう、信用した者に対しては意見を求め、一定の権限を与えて任せる。彼女はワンマン志向ではなく、あくまで合理的なのだ。

3.敵か味方か素性がまだわからないエドワードに対しての質問シーン(17巻)

 地下からスロウスが現れた場面。何か事情を知っているであろうエドワードに対し、オリヴィエは「答えられる所だけ答えろ」「正直にだ!偽れば切る」と厳しい態度で迫り、情報を聞き出す。そのなかで、エドワードはホムンクルスの真実をうかつにしゃべるわけにはいかず、「答えられない」「察してくれ」と返答。その場では、オリヴィエは深く追及しなかった。敵が目の前にいて時間が惜しく、自分たちに協力する意思があるのか、最低限必要な情報を引き出すことを優先したのだろう。

 しかし、エドワードの「察してくれ」の言葉には理由があると考えたオリヴィエは、ひと段落したところで場所を変え、問いただした。さらに「私なら察してくれると信用しての言葉だ」「自分の命を天秤にかけてでも守らねばならぬもの…そして察してほしいもの…」「たとえば人質」と、「察してくれ」の一言から核心をつく。本当のことを話したエドワードに対して、オリヴィエは自分の目で判断し、「この地下道、貴様ら錬金術師ならどう見る?」と尋ねるのである。

 あらゆる情報が不確かあるいは不足していて、事情がわからないなかで、緊急の判断を迫られる……これはリーダーの真価が問われる場面だろう。さらにこのケースでは、なるべく多くの情報を引き出す必要があるが、時間が限られており、そのなかで話を聞くべき相手と内容を瞬時に判断し、行動する必要があった。これをすんなりとやってのけてしまうのが、オリヴィエなのだ。

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