『かげきしょうじょ!!』国広茂登の存在が示す「挫折からの再生」という大きなテーマ

『かげきしょうじょ!!』国広茂登が重要な理由

 国広のエピソードには、もうひとつ重要な要素が織り込まれている。それが戦禍におけるエンターテインメントというテーマである。

 櫻丘みやじからもらった大切な台本は、今はもう手元には残っていない。第二次世界大戦の空襲で、すべてが燃えてしまったのだ。焼け野原と化した街と、あまりにも厳しい現実に直面した国広は、紅華のような夢の世界の存在意義を見失いかけていた。だがもんぺ姿の“白バラのプリンス”は、いつの世にも人々には夢が必要だ、紅華は死なないし私が死なせないと力強く宣言する。そして困難な時代を乗り越えて紅華歌劇団は蘇り、美しい夢を再び人々に届けていった。

 歌劇団や歌舞伎、そしてアイドルという麗しい世界がモチーフとして登場する『かげきしょうじょ!!』のなかで、戦禍の状況や荒廃した街の風景は異質の存在感を放つ。エンターテインメントが長い歴史を紡いでいくとはいかなることなのか、ここからも浮かび上がるだろう。

 さらさと国広の関わりは、これだけでは終わらない。彼女が国広の正体を知るのは第3巻、大運動会をめぐるエピソードだ。この時にさらさが巻き起こす騒動や、国広と“白バラのプリンス”の今も変わらぬ尊い絆を、ぜひコミックスで味わってほしい。

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