『怪獣8号』怪獣たちはなにを目的としているのか? 明らかになりつつある複雑な背景
そんな中、人間の意識を保ったまま怪獣化できるカフカの存在はレアケースで、処遇に関しては防衛隊内部でも意見が割れている。
怪獣と人間の関係が複雑化していく中、カフカは人間として踏みとどまることができるのか? 今後の行方が気になるところである。
戦いの後、カフカは「生き残るために」「お前の有用性を示せ」と四ノ宮長官から言われ、第1部隊に編成される。
第1部隊は日本防衛隊最強の部隊。隊長の鳴海弦はお調子モノの変人だが戦闘能力は随一で「日本最強の対怪獣戦力」と言われている。
そんな鳴海とカフカ、そして第3部隊から第1部隊に編成された四宮長官の娘・キコルが物語の中心となりエピソード5「怪獣兵器」が始まるというのが5巻の流れだ。
矢継ぎ早に展開される怪獣との戦いがどんどん派手になっていくのはバトル漫画好きとしては嬉しいが、日常描写が減りつつあるのは心配である。
怪獣清掃業者で働くカフカの視点を通して「怪獣のいる日常」を序盤で構築できたことが『怪獣8号』の大きな魅力となっていた。
入隊後も仲間たちとの関係を丁寧に描くことで豊かな日常が表現されていたのだが、第3部隊の仲間たちがバラバラになってしまったことで、カフカの日常も失われつつある。
本編から日常描写が減っている状況は、人間の側に止まりたいと願うカフカの“人間性の危機”ともシンクロしている。今後は第1部隊がカフカの新しい居場所になっていくのだろうと思うのだが、カフカが人間の側に止まるためにも、本作も最後まで日常描写を手離さないでほしい。