『怪獣8号』怪獣たちはなにを目的としているのか? 明らかになりつつある複雑な背景

『怪獣8号』怪獣たちの目的は?

 漫画アプリ「少年ジャンプ+」で松本直也が連載している『怪獣8号』(集英社)は、怪獣大国・日本を舞台にしたアクションバトル漫画だ。

 暮らしていた街を怪獣に破壊された日々野カフカは、幼なじみの亜白ミナと共に「怪獣を絶滅させよう」と決意する。その後、亜白は日本防衛隊に入り第3部隊長として活躍。一方、カフカは試験に落ちて怪獣清掃業者で働いていた。入隊制限の年齢が引き上げられたことでカフカは一念奮起し再び試験に挑もうと決意するが、その瞬間、謎の生物が体内に侵食したことで、人型怪獣(通称・怪獣8号)に変身してしまう。

 32歳のカフカを主人公にした「おじさんの再チャレンジ物語」を主軸に、映画『シン・ゴジラ』等で描かれた人類VS怪獣の総力戦という特撮映画のテイストと『NARUTO』(集英社)等のジャンプ漫画が得意とする異能力バトルと所属組織を学校に見立てた青春群像劇のテイストを融合させた本作は高い評価を受けており、最新刊となる第5巻では電子版も含むシリーズ累計発行部数は550万部を突破。人気漫画の指標となっている「このマンガがすごい!2022」(宝島社)の人気漫画ランキングでは、オトコ編で第3位を獲得。第1位の『ルックバック』、第4位の『ダンダダン』と共に、破竹の勢いの「少年ジャンプ+」を代表する看板作品となっている。

※以下、ネタバレあり。

 第5巻では、襲いくる怪獣たちの新たな謎が提示された。

 立川基地を襲った怪獣10号から仲間たちを守るために、怪獣8号に変身したカフカは敵を撃退するものの防衛隊に怪獣であることを知られてしまい、捕らえられてしまう。

 拘束されたカフカの前に現れたのは防衛隊長官の四ノ宮功。かつて札幌市を壊滅寸前まで追い込んだ怪獣2号をベースに造られた識別怪獣兵器を装着してカフカに殴りかかる四ノ宮長官。カフカは怪獣8号に変身して攻撃から身を守るものの怪獣化した肉体は暴走し、四ノ宮長官に襲いかかってしまう。

 地下シェルターで衝突する二人の戦いは壮絶なもので、怪獣8号と怪獣2号の時を超えた怪獣同士の激突となる。

 戦いの中で8号の力は増々高まっていき、四ノ宮長官を殺す寸前まで追い詰める。しかし、ギリギリのところでカフカが怪獣の力を抑え込み、戦いは終結する。

 四ノ宮長官の目的は、カフカの力が制御可能かどうかを確かめることだった。彼の力を制御可能だと判断した四ノ宮長官は、カフカを兵器化せず、生きたまま兵士として運用しようと目論む。

 激しいバトルの連続で読者をひきつける『怪獣8号』だが、会話の節々に怪獣の謎にまつわるヒントのようなものが、見え隠れするのが見逃せない。

 カフカも含めて「怪獣○号」とナンバリングされている怪獣は何体か存在するようで、四ノ宮長官が装着した識別怪獣兵器のように「武器化」されている存在もいれば、9号、10号のように知性を持って人類を襲撃する存在もいる。

 そして、10年前に群発災害を起こし、200人以上の隊員と3人の隊長の命を奪い、現在は「適合者不在」として封印されている6号の不気味な影。

 台風や地震のような自然災害に近い存在と思われていた怪獣たちだったが、彼らの目的は単純なものではなさそうだ。特に9号は人間の手に堕ちた(防衛隊に拘束され武器化された)「怪獣の力」の奪還を目論んでいるようで、そこには複雑な事情がありそうだ。

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