庵野秀明や小島秀夫も絶賛! 古き良きロマンあふれるSF冒険活劇『スノウボールアース』がおもしろい

『スノウボールアース』がおもしろい

 新人漫画家、辻次夕日郎の『スノウボールアース』が面白い。ワクワクする要素満載でページをめくるたびに心が踊る。

 今年の一月から連載が始まった本作はすでに多くの絶賛が聞かれる。一巻の帯には庵野秀明が、2巻では小島秀夫などの大物が絶賛のコメントを寄せているが、それも納得の完成度だ。

 本作は、近未来SFものであり、ロボットものであり、未知の怪獣とのバトルものであり、アポカリプス後のサバイバルものであり、さらに超能力ものでもある。多くの要素がてんこ盛りで破綻せずに一つの確固たる世界観が出来ており、なおかつキャラクターも魅力的で絵が上手い。辻次夕日郎は、1994年生まれで、本作と同名の読み切り作品が新人賞「スピリッツ賞」を受賞したことでデビューの道を掴んだ。新人にしてこの完成度は大型新人の誕生の予感が早くもただよっている。

地球全土が凍結した世界でロボと怪獣と超能力者が入り乱れてサバイバル

 本作のおおまかなあらすじは以下のようなものだ。

 舞台は、2035年から始まる。その10年前に地球に銀河怪獣が襲来。人類は対怪獣戦線「E-RDE」を設立し、主人公の少年、流鏑馬鉄男(やぶさめてつお)は、ロボ・スノウマンと呼ばれる巨大ロボットに乗り込み、怪獣と戦う部隊に選抜される。銀河怪獣との戦いにあけくれること10年、最終決戦にただ1人生き残った鉄男は、地球に帰還するも、世界中が氷に覆われる「スノウボールアース」状態となっており、人類は滅亡しかかっていた。鉄男は、そんな状態の地球で、愛機のロボ「ユキオ」との約束、友達をつくる」ことを目標に、生き残りの人類を探し、彼らとともに脅威と戦うことになる。

 本作の世界観の大きな特徴としてまず挙げられるのは、地球全土が凍結しているという状態だ。タイトルにもなっている「スノウボールアース」とは、かつて地球全土が氷に覆われるほどの氷河時代があったとする地球史についての仮説で、90年代にナミビアなどでの調査を基に科学誌に論文が発表されたことで有名となった。

 この地球全土が凍結することで生物環境が激変し、大量の絶滅とその後の生物の大進化期であるカンブリア爆発を促したとする仮説だ。完全に氷で閉ざされた地球の気温はマイナス50°ほどにもなったとされ、その後、なんらかの理由で二酸化炭素が増加して氷が溶けたという風に説明されるらしい。(参照:『全地球凍結』川上伸一著、集英社新書)

 非常に大胆な仮説で現在も論争が続いているが、本作では、主人公が地球を離れていた10年間に、謎の怪獣が海から出現して、地球を凍らせたという設定になっている。ほとんど文明が滅んでしまった地球には、怪獣が住み着いており、残されたわずかな人類は、怪獣の脅威におびえつつも日々の糧として、怪獣を狩っていたりもする。

 鉄男は、たまたま遭遇した怪獣を倒したことをきっかけに、近くの学校を拠点にコミュニティを形成しているミシマ・モールの人々に受け入れられていく。家族を失うなど、悲劇が日常茶飯事となった世界でありながら、たくましく生きている人類に独りぼっちだった鉄男は勇気づけられる。

 現在、2巻までが発売されているが、作品世界に関しては多くの謎がちりばめられている。地球凍結の原因である海から出現した怪獣の正体、怪獣と心を通わせることで超能力を発揮し、怪獣を操れる人間の存在、主人公と因縁がありそうな人物が率いる謎の団体「E-RDEの灯」の存在など、少しずつ解き明かされるごとに大きな世界を提示していくのだろう。これからどんな展開が待ち受けているのか、ワクワクさせてくれる要素が満載だ。

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