「日本から世界を席巻するウェブトゥーンを」 LINEマンガ担当者が語る、新たなマンガ文化創出への挑戦
新しいマンガ文化の発展のために
――「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門で第3位になった『先輩はおとこのこ』(https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0000602)は、LINEマンガのインディーズから生まれたヒット作ですが、優しく丁寧な筆致で、こうした繊細な物語をタテよみマンガとして楽しめるのは新鮮でした。
小室:そうですね。「ハードル」という意味では、作者のぽむさんは、細やかに描き込んだ“決めるコマ”と、サラリと描く“決めていないコマ”をいいバランスで配置していて、作家さんがいて、アシスタントさんがいて……という今までの日本でもよく見られた制作スタイルでも週刊連載することが可能なんだ、ということを見せてくれています。
――確かに、デフォルメされたキャラクターがわちゃわちゃしているシーンも楽しく、かえってハンドメイドな温かみを感じますし、そのことで美麗な“見せゴマ”が際立っていますね。
小室:ぽむさんはもともとイラストレーターとして活躍されていたこともあって、webtoonだからこそ世に出た新しい才能として、とてもいい例になる方だと思います。
――ちなみに、小室さんはこれまでどんなマンガにハマってきたのでしょうか。webtoonに親しんでいないマンガファンも、「どんな漫画を楽しんできた人が作っているのか」ということがわかれば、親近感がわきそうです。
小室:私はギャグマンガが好きで、『浦安鉄筋家族』(浜岡賢次)はいまでも大好きです(笑)。最初のマンガ体験を振り返ると、やはり手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』のような名作が思い浮かびますし、一方で母親が『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人)の単行本を買ってきてくれたこともよく覚えています。たぶん珍しいですよね(笑)。
最近の作品だと、ページマンガですがウェブに特化していて素晴らしいと感じたのは、「ジャンプ+」さんで連載中の『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)。ストーリーの面白さはもちろん、WEBでの初出であることを意識されているように思えるというか、スマートフォンでも本当に読みやすいんです。また、紙の単行本ならではという意味では、『ゴールデンゴールド』(堀尾省太)が好きですね。こうした映画のようにゆっくり時間が流れるような作品は、webtoonより単行本が向いているな、と思います。
――webtoonというフォーマットのなかで、小室さんがお好きなギャグマンガの可能性はどうでしょう?
小室:実はギャグ漫画はwebtoonに向いていて、韓国では人気の作品があります。構造として「スクロールしなければオチが見えない」ことが、効果的に働いているケースが多いですね。
――ウェブで読むことが前提になっているだけに、一部アニメーションを採用するような仕掛けもでき、怖い演出が入るホラー作品もありますね。こうしたwebtoonならではの演出・アイデアも含めて、新境地を開拓できる作家もいそうです。
小室:そうなんです。レオナルド・ダ・ヴィンチは遠近法をずっと模索していましたが、常にクリエイターもそうあるべきだと思っていて。新しい表現が生まれたとき、「自分の作品には向いていないから取り入れない」というのは当然だと思うのですが、「そもそもその選択肢を知らない」というのは非常にもったいない。
音声SNSの「Clubhouse(クラブハウス)」が大流行したとき、本当に多くの漫画家さんがwebtoonについてトークされていて、キーワードとしてはトレンドになっているのですが、冒頭にも申し上げたように「どこで連載するの?」「どうやって描くの?」とおっしゃっているケースが多かったので、やはりきちんと情報発信をしていかなければと考えているところです。そうしてまずは裾野を広げることが大切で、LINEマンガに限らず、タテよみマンガの発表の場ももっと増えてほしいと考えていますし、短期的な利益ではなく、新しいマンガ文化の発展に貢献できたら、という気持ちが大きいですね。
LINEマンガ
「LINEマンガ」(https://manga.line.me/)は、スマートフォンやタブレットで気軽にマンガ作品が楽しめる電子コミックサービス。月間利用者数7,200万、累計ダウンロード数2億を超える、同市場で圧倒的世界1位の規模の “WEBTOON worldwide service”の一員として日本市場で展開している。
2013年に国内でサービスを開始し、現在約70万点以上を配信。その中でもLINEマンガでしか読めないオリジナル作品や独占配信作品、先行配信作品を700タイトル以上取り揃えており、幅広い支持を得ている。また、スマートデバイスでの閲覧に適した、上から下に読み進める縦スクロール形式でカラーのデジタルコミック”webtoon(ウェブトゥーン)”の作品にも力を入れている。