LINEマンガ「2021上半期ランキング」でオリジナル作品が躍進 『喧嘩独学』『外見至上主義』に見る“ウェブトゥーンの矜恃”

LINEマンガでオリジナル作品が躍進

 電子コミックサービス「LINEマンガ」で、最も支持を集めたマンガ作品をランキング化した「2021上半期ランキング」が発表された。大手漫画誌の看板作品がズラリと並ぶなかで、目を引いたのがオリジナル作品の躍進だ。

『喧嘩独学』(c)T.Jun・金正賢/LINE Digital Frontier

 特に男性向け作品のランキングにおいては、1位『東京卍リベンジャーズ』(和久井健/講談社)、2位『 呪術廻戦』(芥見下々/集英社)、3位『進撃の巨人』(諫山創/講談社)と、アニメ化も話題のメガヒット作品が上位を占めるなかで、LINEマンガオリジナルの連載作品『喧嘩独学』(原作・T.Jun/作画・金正賢)、『外見至上主義』(T.Jun)が堂々、ランクインしている。

 7位の『喧嘩独学』は非力で貧しい主人公・光太が、あるきっかけで「ケンカ」をテーマとした動画で脚光を浴び、“ニューチューバー”として人生を逆転させていく物語だ。弱者が喧嘩で勝つメソッドを教えてくれる謎のチャンネル、次々と現れる格闘技の強者と一筋縄ではいかないライバルたち、さらにリアリティのある描写も多い動画配信の裏側……と、多くの要素がキャッチーに埋め込まれており、読み始めると止まらなくなる作品だ。

『外見至上主義』(C)T.Jun/LINE Digital Frontier

 一方、『喧嘩独学』の原作も手掛けているT.Junの出世作となった『外見至上主義』(13位)は、やはり貧しく、いじめられっ子の蛍介が、容姿端麗で身体能力も抜群の“もうひとつの身体”を手に入れ、奇妙な二重生活を送る日々を描く。ルッキズムを皮肉りながら、作者が得意とする格闘の知識、ヤンキー文化、社会の闇に、ピュアでもどかしいラブストーリーと、やはり多くの気になる要素が共存しており、読者を飽きさせない。

 大手出版社の作品と比較して、メディアでの露出が限定的ななかで、「聞いたことがない」というマンガファンもまだ、少なくないだろう。しかし“読めばハマる”作品として急速に読者層を広げており、2021年8月末時点で『喧嘩独学』は1億43万PV(ページビュー)、『外見至上主義』は4億5382万PVを叩き出している。その人気のポイントは、どこにあるのか。

 ひとつには、いまもっとも注目を集めるマンガ作品といっても過言ではない、『東京卍リベンジャーズ』に通じるテーマを見出すことができる。もちろん、作風やストーリーラインはまったく異なるが、『喧嘩独学』、『外見至上主義』とも、『東リベ』と同様に、もともと「弱者」の側といえる主人公が、「不良/ヤンキー」と戦い、ある種の「リベンジ」を果たしていくところに、緊張感とカタルシスがある。加えて、個性的でビジュアルのいいキャラクターも多く、“推し”を作りやすいこと、絶望と希望が交錯する物語のなかで、ジェットコースターのように感情を揺さぶり、日々溜まりがちなストレスを解消してくれる作品であることも今日的で、人気の要因になっていると思われる。

 他方で、今回のランキングを受けて両作を再読した結果、感じられたのは「webtoon(ウェブトゥーン)」という形式の思わぬ強度だ。フルカラー&縦読みという仕様上、基本的に単行本化ではなく、1話単位の購入orレンタルで収益化されるという特性もあってか、1話あたりの熱量が異様に高く、あの手この手で読者を飽きさせない、スピーディーな展開が続く。

 両作を手がけるT.Junは、LINEマンガ公式ブログのインタビューで、「漫画を描くうえで大事にしていることや、決めているルールなどはありますか?」との問いに対し、「読者の方が読みながら飽きることのないようにしたいと思っています。ネームに余分なコマや、無駄なコマはないか常にチェックしています」「簡単に言うと、一番楽に読んでほしい。もしそれで幼稚な作品や作家だと言われることがあったとしても、読者に楽に読んでもらえるならその方がいいです」と語っており、これはまさにウェブトゥーンの申し子とも言うべき発想だ。

 一方で、「『作品のメインテーマ』と『面白さ』の二者択一であれば、僕の優先順位は面白さにあると思います」とも語っており、この点は、ジャンプ+によるYouTube企画「MILLION TAG」にて「キャラが壊れてもいいから、次のページを開かせる努力をする」と語っている、藤本タツキ(『チェンソーマン 』『ルックバック』)に通じるものを感じる。

 その上で、「辻褄を合わせる」というと言葉がよくないが、目を引く怒涛の展開を続けながら、物語を決して破綻させず、刺激的な要素を違和感なく追加/配置していく能力の高さが、読者の信頼獲得につながっているのだろう。未読の方は、まずはそれぞれ5話くらいまで、騙されたと思って読んでみていただきたい。

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