2021.11.10 12:00

殺人ギャンブルに俊敏なゾンビ、大妖怪と陰陽師の“夫婦バトル” まで　LINEマンガの新連載が刺激的すぎる

文＝向原康太

　電子コミックサービス「LINEマンガ」で、オリジナル作品が盛り上がっている。9月から17本もの新連載が順次スタートしており、いずれもフルカラーのタテよみマンガ＝いま話題の「webtoon」（ウェブトゥーン）作品で、新たなムーブメントを起こそうという気概に溢れているのがいい。

　前回はラブコメを中心に、男女ともそわそわしながら楽しめる作品をピックアップしたが、今回はギャンブルをめぐる知略戦、パニックホラーから妖怪モノまで、刺激的な新作マンガを紹介したい。読み始めたら止まらなくなる、中毒性を持った作品ばかりだ。

『チート・ギャンブル─謀略博戯─』

　刺激的なギャンブル＆闇社会をモチーフにしたマンガには人気作が多いが、そのなかでも「チート」といえる力を使った一風変わった攻略に知的好奇心をくすぐられるのが、『チート・ギャンブル─謀略博戯─』だ。

　カジノを含む統合型リゾート施設の設置に関する法律・IR実施法の成立により、ついに日本に誕生したカジノ施設「カジノ・アルテミス」。それは表の顔で、裏では世界の富豪たちが集う非合法の裏カジノ「カジノ・ハデス」が享楽と無法の楽園となっていた。失踪した幼なじみの少女が「ハデス」の“賞品”にされていることを知った流鏑馬和也は、謎の“チート能力”を携え、裏カジノの殺人ギャンブルに挑むーー。

　ギャンブルマンガの主人公といえば、卓越した発想や神がかり的な勘のよさで勝利を引き寄せるケースが多いが、本作の主人公・流鏑馬和也の武器は、スーパーコンピュータのような演算能力・情報収集力・分析力による、超高精度の「予測」だ。どこでどのようにそんな“チート能力”を使用できるようになったのかは、物語の早々に判明するので実際に読んでいただくとして、本人自身は特別な人間ではなく、読者が感情移入しやすいのがポイントだ。例えば、いくら高確率で勝利できるとしても、「予測が外れれば命の危険がある」状況で勝負に出ることができるか。試されるのは能力というより「度胸」や「決断力」、もっといえば大切な人を救いたいという「想いの強さ」であり、自分の身に置き換えやすいのだ。ギャンブルに身を投じる動機も共感しやすく、等身大のヒーローだと言える。

　そんな主人公が、裏カジノのイカサマ、権謀術数を暴き、逆手にとって相手やギャラリーを驚かせる様は、痛快の一言。しかし、物語はまだ始まったばかりで、より高度な知略戦を仕掛けてくる強者が登場するのは必至だ。和也は謀略渦巻く裏カジノを攻略し、目的を達することができるのか。そして、違法ゆえに強固なセキュリティに守られた「ハデス」から脱出することができるのか。ギャンブルが苛烈さを増すにつれて、注目が集まっていきそうだ。

作品名：『チート・ギャンブル─謀略博戯─』
作者：作画／玉置一平　脚本協力／中川勇樹
連載開始日：9/2(木)《毎週木曜日更新》
作品URL：https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0001178

『デッドランナー』

　学園を舞台にした、ゾンビをめぐるパニックホラー『デッドランナー』も人気を高めている衝撃作だ。グロテスクな描写も多く、全編にわたって閲覧注意の内容だが、“ゾンビもの”を愛好する読者なら、画面をスクロールする手を止められないだろう。

　部活の朝練に励む生徒たち。キドと陸上部の仲間たちも、大会に向けてランニングで汗を流していた。そんななか、突如として教師たちの様子が急変し、生徒たちを次々と襲い始める。部活で培った体力を活かし、キドたちは一目散に逃げ出すが、ゾンビ教師たちとの“戦力差”は歴然で……。

　「ゾンビ」といえば、ノロノロと歩くため逃げ出すこと自体は難しくなく、静かに息を潜めていれば窮地も乗り切れる……というイメージもそれなりに広く共有されていそうだが、本作のゾンビは極めて身体能力が高く、再生能力もあり、とにかく走る。映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』や、人気ゲーム『Days Gone』、あるいは『7 Days to Die』に登場するような、俊敏性と凶暴性を備えたゾンビが学校に現れたどうなるか……答えは、絶望の一言だ。

　本作を読んでいると、張り詰めた緊張感というより、スピーディに展開されるパニックホラーと、タテよみのwebtoonの相性のよさに気づかされる。一刻一秒を争う緊急事態、大人たちが無慈悲なゾンビとして暴れ回るなかで、無力な子どもたちがどう状況を打開していくのか。前途ある少年・少女たちがゾンビに“走り勝つ”ことを祈りつつ、追いかけたい作品だ。