『ダンダダン』は令和の『ゲゲゲの鬼太郎』か 時代を象徴する怪物漫画としての凄味

『ダンダダン』は令和の『鬼太郎』か

 精密な背景描写によって物語を駆動する手法は、日常パートでも健在だ。第9話では、学校の中でオカルンと綾瀬が中々出会えずにすれ違う姿が描かれるのだが、気の強いギャルとオカルトマニアの内気な少年という接点のなかった2人が、一つのミッションをやり遂げたことで心の距離が縮まり、少しずつお互いを意識するようになっていく心の機微が、びっしりと描き込まれた廊下や教室といった学校のディテールと共に伝わってくる。

 宇宙人と幽霊が同時に出現する荒唐無稽な学園ラブコメ&オカルトアクションバトル漫画という、なんでもありの作品だからこそ、背景の密度を高めることで地に足のついた実在感を作者は必要としているのだろう。

 その後、2巻の後半は新エピソードとなり、綾瀬をライバル視する謎の少女・愛羅が登場する。愛羅には、自らを「おかあさん」と言う怪物・アクロバティックさらさらが取り憑いており、オカルンと綾瀬が彼女と戦う決意をしたところで次巻へと続く。

 “アクロバティックさらさら”もターボババアと同じく名前はユーモラスだが、不気味な異物感を醸し出しており、デザインも決まっている。まだ2巻なので登場数は少ないが、今後、宇宙人や妖怪の数が増えていけば、かつて水木しげるの漫画がそうだったように、優れた怪物図鑑として『ダンダダン』は残っていくかもしれない。何が起きるかわからない令和を象徴する怪物漫画である。

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